格安航空の高級化、言うはやすく行うは難しPhoto:Kevin Carter/gettyimages

 座席が狭い。追加料金がかかる。機内食が出ない。旅客機に乗って、こんな文句を言ったことはないだろうか。新型コロナウイルス禍に見舞われる前の20年間、運賃さえ安くしておけば、こうした苦情を無視するのが航空会社の最善の稼ぎ方だった。だが各社は今、何かが根底から変わってしまったという危機感を抱いている。

 格安航空会社(ローコストキャリア=LCC)の草分けである米サウスウエスト航空は今夏、戦略の大幅な見直しを発表した。足元が広い座席セクションの導入などだ。続いて米フロリダ州が拠点のスピリット航空が、プレミアムサービスを8月から開始すると明らかにした。座席指定や機内Wi-Fiのほか、隣を空席にできるオプションもある。

 米デルタ航空などのフルサービスキャリアは、ハブ空港から放射線状に路線を運航し(ハブ・アンド・スポーク方式)、利益率の高い高額席をできるだけさばいてから安い席を埋めようとする。反対に格安航空会社は、特定路線の直行便(ポイント・ツー・ポイント方式)の需要を掘り起こすために運賃を安くする。