ブラジル南東部の農業地帯にある食肉処理場で、血まみれの男たちがウシの内臓の周りに集まり、「金」を掘り当てたかどうかを確認していた。「この大きさを見てくれ」。作業員の1人がウシの肉をふるいに押し付けて、ゴルフボールほどの大きさの硬くて濃いオレンジ色の塊を取り出し、蛍光灯の下で輝かせながらそう言った。そこにあったのは胆石(牛黄)だった。牛黄は、中国の伝統医学(中医学)で特に珍重される原料の一つだ。非常に貴重なものとなっているため、取引業者は1オンス(約28グラム)当たり5800ドル(約90万円)、すなわち金の2倍の価格でも喜んで支払う。高血圧や肥満など、富裕な欧米諸国でおなじみの症状が急増し、それへの対応を迫られている漢方医は、脳卒中の治療に牛黄を使用している。このような症状は現在、中国で広く見られる。半世紀にわたる急速な発展と、それに伴う食生活の変化が背景にある。牛黄への需要急増を受け、世界最大級の牛肉生産地域である米テキサス州やオーストラリア、とりわけ世界最大の牛肉輸出国であるブラジルのサバンナなど、中国から遠く離れた地域で世界的な宝探しが始まっている。
金価格の2倍、ウシの胆石が密輸ブームに
中医学で珍重される「牛黄」がブラジルの闇取引業者や強盗に大人気
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