トランプ米政権が、高関税の回避を目指す70カ国・地域以上との個別交渉を急ピッチで進めている。だが交渉を経て結ばれる合意は、世界貿易を形作ってきた完全な貿易協定には及ばない可能性が高いとみられる。ドナルド・トランプ大統領は多くの提案を受けていると誇示しているものの、事情に詳しい関係者らによれば、これらは経済面での提案ではなく、他国からの交渉の申し出や予備的な電話での会談にすぎない。トランプ政権は交渉相手国に対し、関税引き下げや米国製品の購入拡大などの大まかな要件こそ示しているが、7月8日の期限が迫る中、4月10日時点でも交渉戦略を練っている段階にある。従来の自由貿易協定は通常の場合、交渉には数年を要する。またトランプ氏が1期目に中国、日本、韓国などと締結した特定産業に関するより狭い範囲の合意でも、数カ月の時間が必要となる。議員らは関税に起因するここ1週間の株急落を回避できるよう、合意の成立を切望しているが、ホワイトハウスは数十カ国・地域と同時にはるかに速いペースで交渉を進める必要に迫られており、これが懸念材料となっている。