「主語」を失う理由とは

安斎 そして3つ目に挙げたいのが、「自分主語」と「組織主語」をつなぎ合わせる視座を持てていない、という点です。

 マネジャーになった途端によくあるのが、「なんでもかんでも会社目線で物事を語りだす」というパターンです。

 本人としては「マネジャーになったのだから…」という自覚がそうさせているのかもしれませんが、周りからすると、「あれ? この人、どうなってしまったのだろう?」と思うことも少なくない。

 まず大事なのは、マネジャーになっても「自分主語」を失わないことだと思います。

 つまり、自分の感情や信念を保持し続けて、それをしっかりと表現できるかどうかですね。

 ただ、マネジャーとしては、もちろん「自分主語」ばかりではやっていけません。

 むしろ、「自分主語」と「組織主語」をつなぎ合わせられるかどうかが大事になります。

 たとえば、自分が所属している会社に対して、「本当はもっとこうなれるはずだ」と語れる人。

 そこには、組織に対する愛着と可能性を同時に見ている視座があると思うんです。

 こうした人は、自分の感情や信念(=自分主語)だけでなく、組織のありたい姿(=組織主語)も踏まえた上で語れる

 そして、両者を結びつけて、周囲を巻き込むようなマネジメントができる

 自分と組織をつなぎながら語れる人こそ、未来のリーダーになっていくと思います。

安斎 勇樹(あんざい・ゆうき)
株式会社MIMIGURI 代表取締役Co-CEO
1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。組織づくりを得意領域とする経営コンサルティングファーム「MIMIGURI(ミミグリ)」を創業。資生堂、シチズン、京セラ、三菱電機、キッコーマン、竹中工務店、東急などの大企業から、マネーフォワード、SmartHR、ANYCOLORなどのベンチャー企業に至るまで、計350社以上の組織づくりを支援してきた。また、文部科学省認定の研究機関として、学術的知見と現場の実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高める「知の開発」にも力を入れている。ウェブメディア「CULTIBASE」編集長。東京大学大学院 情報学環 客員研究員。主な著書に『冒険する組織のつくりかた 「軍事的世界観」を抜け出す5つの思考法』(テオリア)、『問いかけの作法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、共著に『問いのデザイン』(学芸出版社)、『リサーチ・ドリブン・イノベーション』(翔泳社)、『パラドックス思考』(ダイヤモンド社)、『チームレジリエンス』(JMAM)などがある。