具体的な問題があるわけではないけれどなぜだかモヤモヤする職場になっていないだろうか。そんな悩みにおすすめなのが、組織開発というアプローチだ。『いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方』(中村和彦監修・解説、早瀬信、高橋妙子、瀬山暁夫著)では、組織開発のはじめ方を成功事例とともに紹介している。本記事では、組織開発的な観点から職場にありがちな悩みの改善策を著者に聞いてみた。
「いい職場のイメージ」は、みんな少しづつ違う
新年度、異動や転職でドキドキしながら新天地に向かった人も多いでしょう。
ところが期待に反して、ドンヨリした職場だった、ということもないわけではありません。
本記事では、職場のメンバー全員にとって働くのがラクになるコツをご紹介します。
例えばあなたが職場のマネジャーだった場合、メンバーの気持ちを変えるにはどのような取り組みをすればいいのでしょうか。
まず「組織における3つの機能」について説明をします。
1つ目は、「みんなで仕事を分担したりして力を合わせる」という機能。2つ目は、「組織は学びの場でもある」という機能。先輩から後輩に仕事を教えながら、あるいは先輩の背中を見ながらリーダーシップが身についていく、というようなことです。3つ目は、「一体感を高める」「一緒にいて楽しい」「働く幸せが感じられる」というような「気持ち系」の機能。
そして、この3つの組織の機能のうち、「今この職場で一番足りてないのはどれですか?」と尋ねて、手を挙げてももらいます。
答えは、必ず3通りに分かれます。
例えば、「もっと仕事を教えてもらいたい」という思いを抱える若手社員は、「学びの場としての機能」に期待します。
一方、責任ある立場の人になると、「結果を出したい」という思いが強いことから、「上手に仕事を分担・協力して効率的に結果を出す機能」と答えます。
日々安定して仕事ができていればいいと思っているタイプの人たちは、「一体感を高めていきたい、楽しく働きたい」といった言い方をする。
この回答をふまえて、「いい職場とはどういうものだろう」というテーマで対話をしてもらうのです。すると、3ヵ月後には回答の構成がガラッと変わることがあるのです。
これは、お互いの期待を知ることでモチベーションが上がり、職場での発言が前向きに変化し始めるためです。
この対話の狙いは、「いい職場のイメージはお互いにちょっとづつ違う」という事実を、全員が理解することにあります。
「私はこういうことが大切だと思っているけれど、あなたは少し違うんだね」ということをお互いに知っている状況が安心安全な職場をつくる。
それこそが、多種多様な人間が集まる職場でラクに働くコツなのではないでしょうか。
(取材・文 間杉俊彦)