センスがある人の「締めくくり」の技術
20万部のベストセラー、200冊の書籍を手がけてきた編集者・庄子錬氏。NewsPicks、noteで大バズりした「感じのいい人」の文章術を書き下ろした書籍『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』(ダイヤモンド社)を上梓しました。
実は、周囲から「仕事ができる」「印象がいい」「信頼できる」と思われている人の文章には、ある共通点があります。本書では、1000人の調査と著者の10年以上にわたる編集経験から、「いまの時代に求められる、どんなシーンでも感じよく伝わる書き方」をわかりやすくお伝えしています。

どんな相手も和ませる「メールの締めくくり」の簡単テクニックPhoto: Adobe Stock

「締めくくり」で相手との距離を近づけられる!

あなたは、自分を「感じのいい人」に見せたいシーンで、メールをどのように締めくくりますか?

たとえば、次のような文章。

● 日ごとに暑さが増しております。どうかご無理のないようお過ごしください。
● 明日から寒くなるようです。お風邪など召されぬようご自愛くださいませ。

こうやって「季節を絡めた表現+相手を気づかった一言」で締めくくるだけでも、印象がよくなりますよね。

ただこれだけだと、定型文すぎるというか、ちょっと物足りないと感じる人もいるかもしれません。淡白でオリジナリティがない。もっと「あなたのことを考えていますよ感」を出したい。

そんなときにおすすめなのが「一通ずつアレンジする」です。
相手の状況やエリアを想像したり、天気を調べたりして、より具体性を付与していきます。

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【取引先の人事担当者に対して】
この時期、新入社員のご対応などでいつも以上にお忙しいと想像します。週末は少しでもゆっくり過ごせますように。

【大阪在住の人に対して】
大阪ではインフルエンザが大流行中とニュースで見ました。どうぞ暖かくしてお過ごしください。
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こんなふうに「相手が見ている(感じている)情景」に視点を切り替えて、「仕事の状況」「天気」「身のまわりで話題になっていること」などを想像すると、相手にぴったりの文章を書けるはずです。

また、ある程度距離が近くなった相手なら、自分のことをさらっと伝えるのも魅力的だと思います。

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~~、以上、ご検討のほどよろしくお願いいたします。
そういえば最近、引っ越しをきっかけに、器集めに夢中になっています。渋めの器が好みなんですが、北欧の感じもいいな~と気づいてしまい、順調に「器沼」にハマりつつあります…! ◯◯さん(相手の名前)、器がお好きだったなと思い出しました。
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なんかほっこりするというか、読んでいてうれしくなる文章ですよね。

ただこうやって自分の話を書く場合、自分の話で完結するのではなく、最後は相手につなげるのがポイントです。「なんで私にこの話をしたの?」「どうコメントしていいやら」と思わせないようにしましょう。

自分のことを書くといってもなんでもいいわけではなく、共通の趣味や出来事を先に思い出して、そこから逆算して自分の話から始めるのがいいかもしれませんね。

ただし前半であれば、そのあとに本題が流れるので、相手へのフリが入らなくても問題ないケースもあります。

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もうすぐバレンタインですね。週末は激混みのデパートに義理チョコを仕入れに行って、ぐったり疲れました…。
さて、先日ご連絡していた案件ですが~~
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こういう書き方であれば、相手も返信するときに「なにかコメントしなきゃ」という負担を感じにくいはずです。

ただし、締めくくりもそうですが、長すぎるのはNG。
とくに冒頭に書く場合は、そのあとに本題が続くので、2、3文に抑えたほうがいいでしょう。あともちろん、頻度が高すぎるのも逆効果になりかねません。

こういう話をすると、「だったら用件だけ書けばいいじゃん」と思うかもしれません。その気持ちもよくわかります。とくに仕事の連絡においては。

でもこういう一言があると、素直にうれしいものです。

久しぶりに連絡をとったとき、相手の本音を引き出したいとき、自分のキャラクターを知ってもらいたいとき。

そういうタイミングで適度な自己開示をすると、相手との距離を近づけられるのではないでしょうか。

それに相手を気づかった文章を書くことで、自己療養というか、心が満ちていく感覚も得られると思います。

庄子 錬(しょうじ・れん)
1988年東京都生まれ。編集者。経営者専門の出版プロデューサー。株式会社エニーソウル代表取締役。手がけた本は200冊以上、『バナナの魅力を100文字で伝えてください』(22万部)など10万部以上のベストセラーを多数担当。編集プロダクションでのギャル誌編集からキャリアをスタート。その後、出版社2社で書籍編集に従事したのち、PwC Japan合同会社に転じてコンテンツマーケティングを担当。2024年に独立。NewsPicksとnoteで文章術をテーマに発信し、NewsPicksでは「2024年、読者から最も支持を集めたトピックス記事」第1位、noteでは「今年、編集部で話題になった記事10選」に選ばれた。企業向けのライティング・編集研修も手がける。趣味はジャズ・ブルーズギター、海外旅行(40カ国)、バスケットボール観戦。

※この連載では、『なぜ、あの人の文章は感じがいいのか?』庄子 錬(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集して掲載します。