東日本大震災前には約5500人いた宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区の住民の大量流出が現実となりそうだ。市が21日に市議会震災復興調査特別委員会で公表した「閖上地区まちづくり個別面談集計結果(平成25年5月11日版)」によると、東日本大震災で地区全体が壊滅的な被害を受けた閖上に「戻りたい」とした住民はわずか25.2%にとどまり、9ヵ月前の調査より大幅に減っている実状だった。
前回調査から9%も減少
「戻りたい」人は4人に1人だけに
Photo by Yoriko Kato
住民への意向調査は、今年4月8日から5月11日にかけて面談形式で行われた。2012年夏の調査に続いて2回目となり、9ヵ月前に比べてどのような変化が見えてくるのか注目されていた。
回答したのは対象者の81.5%にあたる1823人。このうち、市が計画を進める現地再建のエリア(土地区画整理事業区域)内での住宅再建や災害公営住宅への入居を希望した人は459件で、全回答者のわずか25.2%となった。前回に比べて9ポイントも減少した。
一方、現地再建エリア外(仙台東部道路の西側)の災害公営住宅への希望者は13.5%の246人となった。
そのほか、閖上地区外での土地取得や賃貸住宅への入居を希望する人は23.3%(425件)、すでに別の場所へ移転した人は22.8%(415件)、残りは、元から別の場所に住んでいた人10%(184件)、未定5%(95件)などという結果になっている。
市は、壊滅的な被害を受けた閖上地区のうち、1丁目と2丁目の45ヘクタールを3メートルから5メートルかさ上げしたうえでの市街地の再建を目指している。しかし第5回(『1年ぶりの閖上地区・住民説明会に800人 住民軽視で進む名取市「現地再建策」の中身』)でも紹介した説明会での住民の反応のように、津波に対する恐怖感をぬぐえずにいる人や、閖上はもはや住むべき場所ではないと考える人も少なくなく、市側と市民との意識の溝が深まっている。