誕生日会をする家族写真はイメージです Photo:PIXTA

暴言や暴力などで子どもの心身を支配しようとする「毒親」ばかりがフォーカスされがちだが、じつはもっと恐ろしいタイプの親がいる。心理学者の筆者によれば、子どもを愛してやまない親が「あなたのためなのよ」と振りかざすアクションには、親自身も気づかない猛毒が含まれている場合があるというのだ。※本稿は、泉谷閑示『「自分が嫌い」という病』(幻冬舎新書)の一部を抜粋・編集したものです。

子は無条件に親を愛すが
一方通行な愛になることもある

 人は他の動物と同様に、自分を産みケアしてくれる親という存在を信頼して生まれてきます。もちろん幼いうちは、まだ親という存在を対象化できておらず、空気のように当たり前に思っているだけで、「信頼」とか「愛している」といった概念すらありません。しかし、後々の問題を考える上で、ここではあえてこういう表現で言わざるを得ないのですが、子どもは無条件に親を「信頼」し、「愛している」状態で生まれてくるわけです。そして自分が親を愛しているのと同じく、無条件で親から愛してもらえるはずだとも思っているのです。

 しかしながら、実際には、この相思相愛の想定に反するような事態が、どうしてもさまざまに起こってきます。親を神のように見ている限り、その関係の不調和は、すべて自分の至らなさによるものとして子ども側が吸収してしまうことになります。そして、「親を愛している」感情はそのまま温存されながらも、徐々に親の問題点が分かるようになり、もはや親は神ではないことが認識されるようになっていきます。しかしながら、「親を愛している」という生まれた時から持っている基本的な感情は、奥深いところに温存されたままなので、批判的に見ることも中途半端になり、曖昧な認識にとどまってしまうことが多いのです。