自分の口座のありか、家族に伝えてる?
「口座情報の共有」のため、財産の一覧表を作ろう!

「終活」として真っ先に取り組みたいのが「口座情報の共有」だ。アナタは自分がどの銀行や証券会社に口座を持っているか、家族に伝えているだろうか? その情報がなければ、アナタに万一のことがあったとき、家族は手探りの状態で口座を探し出す苦労を強いられる。ネット取引が主流の今、通帳や株券などの手掛かりもなく、家族が途方に暮れることも少なくないのだ。

 さらに、ようやくすべての財産を把握し、相続税を申告し終わったと思っても、その後に新たな財産が見つかったら一大事。修正申告が必要になり、遺産分割協議もまた行うことになる。相続税の納税の期限に間に合わなければ、延滞税もかかってしまう。大切な家族に計り知れない負担を負わせないためにも、財産の一覧表作成は急務だ。

 以下では、一問一答の形式で、家族と口座情報を共有するために必要なポイントを紹介していこう(以下、解答してくれたのは相続専門税理士の前田智子さんと、ファイナンシャルプランナーの藤川太さん)。

【Q】最低限、家族に共有すべき情報は?

 残高や取引内容は内緒でもいいですが、利用している銀行や証券会社といった金融機関の名前は、必ず家族に伝えておきましょう。手掛かりがないと、どの会社に口座があるかを特定するだけでも一苦労です。

 FXや暗号資産の取引は、家族に黙ってやっている人も多いのでは? これも、どの会社を利用しているか、必ず伝えてください。(前田)

【Q】紙とデジタル、どちらで書き残せばいい?

 アナログな「紙」の形で情報を残したほうがいいでしょう。家族が見つけられるようにしておくことが何より大事です。スマホやパソコンに一覧表を作るのなら、ログインのパスワードまで共有しておく必要があります。面倒であれば、証券会社から送られてくる書類をまとめておくだけでも、家族は助かるはずです。(前田)

【Q】どんな財産をリストアップする?

「終活」というと相続税の節税や遺産の配分に意識が向きがちですが、大前提として、ご自身の財産をすべて洗い出して「見える化」し、現状を正確に把握することが必要です。金融機関にある資産はもちろん、タンス預金や、現物で持っている金やプラチナも忘れずに記載しておきましょう。

 保険も相続財産の中で大きな金額を占めます。被保険者(保険がかけられている人)が自分の保険はもちろん、自分が保険料を負担し、被保険者が自分以外の保険も記載しましょう。これも相続財産になります。(前田)

【Q】証券会社のパスワードは書き残すべき?

 相続手続きだけが目的なら、IDやパスワードまで書き残す必要はありません。防犯上のリスクが大きいので、書き残さないほうがいいでしょう。

 財産情報をまとめたバインダーを作っていた方が、東日本大震災の際に、持ち出すことができずに盗まれてしまったケースがあります。もしバインダーにパスワードのメモや通帳、印鑑まで一緒に入れていたら、さらに大変な事態になっていたことでしょう……。

 また、家族による使い込みのリスクもあります。安易にキャッシュカードを渡したり、暗証番号を教えたりすることは非常に危険です。家族には「どこに口座があるか」「どんな契約があるか」といった金融機関のリストを紙で残しておくのが、もっとも安全で確実な方法です。(藤川)

【Q】口座を探し出す方法はあるのか?

 亡くなった方が契約していた証券口座がどこにあるかまったくわからない場合、証券保管振替機構(通称:ほふり)に問い合わせてみましょう。ほふりは、上場株式などの振替制度を運営しており、証券会社に口座を開設している投資家の情報を集約しています。

 一方、FXや暗号資産の口座については、一括で問い合わせる方法はありません。一つ一つ金融機関をあたる必要があります。

 なお、銀行口座に関しては、2025年4月から「相続時預貯金口座照会」という新しい制度が始まっています。マイナンバーに紐づけられた口座であれば、まとめて確認できるようになりました。(藤川)

【Q】保険や土地が探し出せないときは?

 生命保険は「生命保険契約照会制度」で、生命保険協会に加盟しているすべての生命保険会社に対して、故人の契約情報を一括で照会できます。

 土地や建物については、市区町村役場の税務課(固定資産税課)で「土地・家屋名寄帳」を取得すれば調べられます。ただし、市区町村ごとでしか調べられません。土地の中でも、山林は見逃されがちです。免税のため、固定資産税課税明細書が届かないからです。一覧表にしっかり記載しましょう。