「“考えすぎ”から解放された」
そんな感想が世界中から届いているのが、世界150万部突破・39か国刊行のベストセラーとなっている『STOP OVERTHINKING ── 思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』だ。Amazon.comでも1万3000超のレビューで世界が絶賛する話題書がついに日本上陸。本書によって日本人が考えている以上に「考えすぎ」が恐ろしい事態を招くことがわかった。本連載では「考えすぎ」から解放される5つの習慣を紹介。今回はライターの照宮遼子氏に「第4の習慣:思考や行動を変えるコツ」について寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「考えすぎ」から解放される5つの習慣
とかく日本人は「考えすぎ」な人が多いといわれるが、私は何事も考えすぎてしまう傾向にある。
本書では、下記の「5つの習慣」を紹介している。
この習慣を身につけることで、「考えすぎ」や「思考の無限ループ」から解放されるかもしれない。
2 時間を管理する(第2の習慣)
3 心と体を瞬時に落ち着かせる(第3の習慣)
4 思考や行動を変える(第4の習慣)
5 「態度」を変える(第5の習慣)
今回は「第4の習慣」を一緒に考えてみたい。
気づかないうちに
繰り返している「落とし穴」
誰にでも、ちょっとした言葉や態度に心がかき乱される瞬間がある。
会議で上司に笑われたとき、SNSで見たコメントに引っかかったとき――「なんであんなに気になるんだろう」と自分でも不思議になるくらい、頭の中がざわついてしまう。
冷静に考えれば取るに足らない出来事のはずなのに、気持ちは簡単に支配され、仕事や生活にまで影響が出てしまう。
そんな些細なことに心を奪われてしまう自分に、後から情けなさや疲れを感じた経験はないだろうか。
こうした反応には、それぞれの人が抱えている感情のトリガーがある。
過去の体験や価値観に結びついたスイッチのようなもので、ふとした一言や仕草がそれを押してしまうのだ。
心を乱す出来事が続くとき、そこには決まって同じパターンが潜んでいる。
気づかないうちに、毎回同じスイッチが押され、同じ反応を繰り返してしまうのだ。
たとえば同僚の「最近、忙しそうだね」という何気ない一言で、胸がざわつく人がいる。
相手に何の悪気はなくても、「自分は仕事をうまく回せていないのでは」と不安が膨らんでしまうのだ。
一方で、同じ言葉をかけられても「気にかけてくれているんだな」と受け止められる人もいる。
この違いは、状況そのものではなく、それぞれの中にあるスイッチが押されたかどうかにすぎない。
ほんの一言で心が波立つとき、実は自分の内側に仕掛けられたトリガーが作動しているのである。
怒りと不安をコントロールできる人の習慣
本書で著者のニック・トレントンはこう述べている。
――『STOP OVERTHINKING』(P.201)より
反応に支配されることは、避けられない運命ではない。
場面は同じでも、自分のスイッチが押されたとわかれば選び直すことができる。
怒りに任せて言い返すのか、それとも深呼吸して受け流すのか――その違いは小さな意識の差にすぎない。
「またこのパターンだ」と気づくだけで、心の中に一瞬のゆとりが生まれる。
その余白があるかないかで、感情の波にのまれるかどうかが決まっていく。
心をかき乱すトリガーは、多くの場合、過去の経験や価値観と結びついている。
子どもの頃から繰り返し言われてきた言葉や、これまでに受けた扱いが、無意識のうちに心のスイッチを形づくっていることがある。
だから、他人にとっては何でもない一言でも、自分にとっては強烈に響いてしまう。
たとえば学生時代に、ちょっとした失敗をからかわれたことがある人は、社会人になっても「笑い」に敏感に反応しやすく、それが不安や緊張のトリガーになることがある。
あるいは、家庭で「もっと努力しなさい」と言われ続けて育った人は、同僚の軽い指摘に胸がざわつくこともある。
こうした反応は性格の問題ではなく、心の奥にあるスイッチが作動しただけ。自分の中にそんなスイッチがあると知ることが、変化の出発点になる。
感情のスイッチを
可視化するフレームワークとは?
トリガーを見つける手がかりとして、行動分析学の「ABCモデル」が役に立つ。
出来事の前にどんな状況があったのか(A:先行条件)、そのとき自分はどう行動したのか(B:行動)、その結果として何が起きたのか(C:結果)を書き出してみるのだ。
たとえば、次のように考えてみる。
「同僚に軽く指摘された」(A)→「その場で黙り込む」(B)→「後で一人で不安と苛立ちが膨らむ」(C)。
この流れを整理すると、どんな場面で自分のスイッチが入りやすいのかが見えてくる。気づくだけで「またこのパターンだ」と認識でき、反応にのみ込まれにくくなる。
人に振り回されがちな人の特徴
人に振り回されるのは、心が弱いからではない。
ただ、自分の奥にあるスイッチが押されているだけだ。
それに気づけると、これまで当たり前のようにのみ込まれていた感情が、少しずつ静まっていく。
理不尽な一言も、思いがけない態度も、この先なくなることはない。
けれど、ほんの一瞬の選び直しが、日々の積み重ねを変えていける。
感情に支配されるのか、それとも自分の意志で舵を切るのか。
その違いは、時間が経つほど大きな差となって現れる。
小さな気づきの積み重ねが、思考の無限ループから抜け出す力になる。
感情のトリガーに気づけるかどうかが、未来の自分を大きく変えていくのだ。
第4の習慣(思考や行動を変える)を実践するだけも、「考えすぎ」や「思考の無限ループ」は劇的に減ると思う。
本書は考えすぎから解放される大きなトリガーとなる。ぜひ試してみてほしい。
(本稿は『STOP OVERTHINKING ―― 思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』に関する特別投稿です)