考えすぎ”から解放された
そんな感想が世界中から届いているのが、世界150万部突破・39か国刊行のベストセラーとなっている『STOP OVERTHINKING ── 思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』だ。Amazon.comでも1万3000超のレビューで世界が絶賛する話題書がついに日本上陸。本書によって日本人が考えている以上に「考えすぎ」が恐ろしい事態を招くことがわかった。本連載では「考えすぎ」から解放される5つの習慣を紹介。今回はライターの照宮遼子氏に「第5の習慣:「態度」を変えるコツ」について寄稿いただいた。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【イラッとした時】三流は「感情をぶつける」、二流は「我慢する」、では一流は?Photo: Adobe Stock

「考えすぎ」から解放される5つの習慣

 とかく日本人は考えすぎるといわれるが、私も仕事でもプライベートでも考えすぎてしまうことが多い。

 本書では、下記の「5つの習慣」を紹介している。

 この習慣を身につけることで、「考えすぎ」や「思考の無限ループ」から解放されるかもしれない。

1 ストレスを管理する(第1の習慣)
2 時間を管理する(第2の習慣)
3 心と体を瞬時に落ち着かせる(第3の習慣)
4 思考や行動を変える(第4の習慣)
5 「態度」を変える(第5の習慣)

 今回は「第5の習慣」を一緒に考えてみたいと思う。

溜め込むか、爆発するか

 ランチで注文してから20分、まだ料理がこない!

 最初は「まぁ混んでいるから仕方ないか」と思っていたのに、時計の針が進むにつれ、胸の奥がそわそわしてくる。

 隣のテーブルにはもう料理が並んでいるのに、自分の席は空っぽのまま。
「このままだと次の予定に遅れるかも」という焦りと、「どうして自分の分だけ遅いんだろう」という苛立ちが、同時に膨らんでいく。

 電車の遅延、レジの行列、なかなかつながらない電話。
 思い通りにいかない小さな場面は、日常にいくらでもある。

 大事件ではないのに、心の奥に小さなトゲが刺さったような感覚が残る。
 そしてそのトゲは、ため息や不機嫌な表情となってにじみ出てしまう。

 振り返れば、冷静さを奪うのは特別な出来事ではなく、むしろこうした小さな苛立ちの積み重ねなのかもしれない。

 苛立ちや焦りにとらわれると、体は思いのほか正直に反応してしまう。
 ため息がこぼれ、足が落ち着かなくなり、視線も定まらずに泳いでいた。
 ほんのささいな出来事なのに、心と体はいつのまにか大ごとに構えてしまうのだ。

 そのまま感情をぶつければ、「余計なことを言った」と後悔する。
 かといって、何も言わずに飲み込めば「どうして黙っていたんだろう」と悔やむ。

 結局どちらに転んでも、自分をすり減らしてしまう。
 だからこそ大事なのは、巻き込まれそうになった瞬間に、ほんのひと呼吸おいて選び直すこと。
 そのわずかな余裕が、感情とのつき合い方をまるごと変えてくれる。

 多くの人がつい勘違いしてしまうのは、感情は「消さなければならないもの」だと思い込むことだ。

 けれど、押し込めようとすれば逆に大きく膨らんでしまう。
 嫌な上司の顔を「忘れよう」とすればするほど、かえって鮮明に浮かんでくるのと同じだ。

 大事なのは、感情を敵にせず、「サイン」として受け取ること。
 苛立ちを覚えたら「自分は今、時間を気にしているんだ」と気づけばいい。

 不安に駆られているなら「準備が足りていないのかも」と受け止めればいい。
 そう気づいた瞬間、感情はただのノイズではなく、次の行動を選ぶためのヒントに変わる。

 ここで忘れてはいけないのが、「感情にハンドルを握らせない」ということ。
 一度でもハンドルを渡してしまえば、行き先はもう自分では決められなくなってしまうからだ。

数秒で冷静さを取り戻す
シンプル習慣とは?

 これについて、著者のニック・トレントンは本書でこう述べている。

感情をどこかに押しやろうとしても、うまくつき合えるようにはならない。大切なのは、今の自分がどんな感情を抱いているかを言葉で認識し、感情に対する理解を深めることだ。
――『STOP OVERTHINKING』(P.246)より

 感情と距離をとるにはどうすればいいのか。
 そこで役立つのが、本書で紹介されている「ラベリング」という習慣である。

 心の中で「苛立っているな」「焦っているな」とつぶやいてみる。
 ただそれだけで、感情と自分との間にほんの少しのスペースができる。

 その一言をはさむだけで、さっきまで条件反射のように湧き上がっていた反応が弱まってくる。

「この時間でメールを返そうかな」とか「外の景色でも見て気分を整えよう」といった別の選択肢が自然と浮かんでくるから不思議だ。

 感情を消そうとしなくてもいい。
 ただ名前をつける。
 それだけのことが、思っている以上に大きな力となるのだ。

感情を横に置くだけで行動は変わる

 ラベリングのいいところは、どんな場面でも使えるということだ。
 たとえば会議の直前。
 心拍数が上がり、手が冷たくなる――そんなとき、「緊張しているな」とつぶやくだけで、「これは今の自分に必要な反応なんだ」と受け止められる。

 過去の失敗を何度も思い返してしまうときも、「また同じ場面を再生しているな」と実況すれば、頭のリピートから抜け出して、今に戻れる。

 感情を横に置く習慣があるだけで、判断は少し落ち着きを取り戻し、行動も自然と前に進みやすくなる。

一流がやっている小さな習慣

 感情を実況するのは、誰かに見せるためではない。
 自分との距離を整えるための、小さな習慣だ。

「落ち込んでいるな」と気づけた人は、自分に少し優しくなれる。
 そうやって自分をいたわれる人は、自然とまわりにも穏やかに向き合える。
 その循環が、思っている以上に大きな支えになる。

 日常の景色は、わずかな視点の違いで変わる。
 感情は時に重たくのしかかるけれど、「名前をつけて横に置く」だけで、自分の選択肢は広がっていく。

 待たされる時間も、緊張の瞬間も、過去にとらわれる夜も、ひと言実況できれば、心は少しずつ自由になり、進みたい方向を選び直せるようになっていく。

(本稿は『STOP OVERTHINKING ―― 思考の無限ループを抜け出し、脳が冴える5つの習慣』に関する特別投稿です