クリスマスの奇跡が起きる季節になり、ドイツでは年金を巡る非常に大きな論争が始まっている。確かにこれは地味な奇跡だが、欧州一の経済大国が必要とする神の介入と言えよう。同国議会では今週、米国の社会保障制度に相当する年金制度の長く先送りにされてきた改革法案の採決が予定されている。法案は素晴らしいものではない。政治的な奇跡は、一部の有力議員がそう述べて、フリードリヒ・メルツ首相がより中身のある長期改革を支持しない限りこの法案をつぶすと脅しをかけていることだ。この背景には、かねてドイツに年金の危機が迫っていることがある。急速な高齢化により、「法定年金」のコストは年間約3600億ユーロ(約65兆円)、国内総生産(GDP)比8%となっている。年金給付の財源は給与税の税収だけでは賄えず、ドイツは昨年、社会保険制度全体で960億ユーロの不足分を補うために一般税収に手を付けることを余儀なくされた。この状況を放置すれば、年金制度の財源確保のためだけの増税を迫られるか、国防費など他の優先分野から資金が奪われることになるだろう。あるいは、その両方かもしれない。