ロバート・ケネディJr.米国保健福祉省(HHS)長官Photo:Bloomberg/gettyimages

 バイオ医療分野の技術革新を起こして中国に対する 米国の優位性 を高めるというトランプ政権の野心は、米食品医薬品局(FDA)内部のはるかに厄介な現実にぶつかっている。

 まれに見るバイオテクノロジー株の回復 の流れに乗っている投資家は、列車から飛び降りる必要はないが、もっと困難な状況になることを覚悟すべきだ。

 FDA内部 は政策を巡る闘いや悪化する人事問題、規制の突然の転換によって混沌(こんとん)とした感が強まっており、それが信頼感を損ない、投資を脅かしている。1カ月足らず前にリチャード・パズダー氏が新薬審査部門のトップに任命されたのは極めて重要な部門を安定させるのが目的だったが、同氏の辞任が広く報じられたことは、既に不安になっていた投資家に新たな衝撃を与えた。今年に入って医薬品評価研究センター(CDER)のトップを務めた人物は、パズダー氏で4人目だった。同氏がすぐに辞任したことは「FDA内部が混乱状態にあるとの見方を増幅させる公算が大きい」と、RBCキャピタル・マーケッツのアナリスト、ブライアン・エイブラハムズ氏は指摘した。

 投資家は今年、ワクチン懐疑派のロバート・ケネディ・ジュニア氏が厚生長官になり、バイオ医薬品株が投資対象として適当ではなくなる可能性があるとの見方が出てきたことでパニックになった。だが、勇気を持って投資を続けた人たちは報われた。ジョンズ・ホプキンス病院の元外科医であるマーティー・マカリーFDA長官が技術革新への支援と希少疾患治療薬の承認加速を約束し、当初は投資家の不安を鎮めた。上場投資信託(ETF)のSPDR S&PバイオテックETFは回復し、過去6カ月で約48%上昇した。