製薬業界、米で計3500億ドル投資へ 関税影響を緩和ノースカロライナ州コンコードに新設されたイーライリリーの工場開所式に出席したロイ・クーパー州知事(2024年6月)
PHOTO: TRAVIS DOVE FOR WSJ

 米国で生産能力を拡大する動きが製薬業界で相次いでいる。

 英製薬大手GSKと米製薬大手イーライリリーは16日、米国の新規製造工場やその他の事業拠点を建設する計画を明らかにした。トランプ政権が輸入医薬品に課す関税の影響を緩和する狙いもある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が各社の発表をまとめたところによると、今年に入ってから10社以上の製薬会社が2020年代末までに米国での製造、研究開発、その他の機能に総額3500億ドル(約51兆1930億円)以上を投資することを約束している。

 GSKのエマ・ウォームズリー最高経営責任者(CEO)は16日のインタビューで、「米国向けの当社製品の大部分は米国で製造している」と述べた。GSKはこの日、今後5年間で研究開発とサプライチェーン(供給網)のインフラに300億ドルを投資すると発表した。「これはもちろんそれに加わるもので、進行中の新製品パイプラインに関わるものだ」と同氏は説明した。

 イーライリリーは同日、バージニア州リッチモンド西部に50億ドルの製造工場を建設すると発表した。モノクローナル抗体やバイオコンジュゲートと呼ばれる複雑な医薬品を製造する。

 他の大手製薬会社も今年、同様の約束をしている。米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、今後4年間で米国での製造、研究、技術に550億ドルを投じると約束した。英アストラゼネカは、30年までに米国での新たな製造・研究能力に500億ドルを支出すると表明した。

 一部のプロジェクトは昨年以前から計画されており、新型コロナウイルス流行期に製薬各社が経験したような国境を越えた混乱を緩和するため、国内の供給網を強化することを目的としていた。

 製薬企業が約束した巨額の投資額の一部には、医薬品研究や通常の設備投資など、製造以外の事業への支出も含まれている。