田中社長は、「上昇した地域には、『明確な新しい話題』がある。注目されるきっかけはそれぞれだが、関心が高まった地域ほど順位を伸ばしている」と述べる。

最下位になってしまったのは…
県名との結びつきの弱さが明確に

 一方で、昨年の追い風を維持できなかった地域もある。

 石川県は前年9位から15位(44.2点)へと順位を落とした。北陸新幹線敦賀延伸により昨年は注目されたが、メディア露出や話題性が落ち着いたことが影響した。前年16位から23位(40.0点)になった宮城県や、前年13位から24位(39.6点)の大分県も同様で、前年に大きくクローズアップされた地域ほど、翌年に順位が下がりやすい傾向が浮かび上がった。

 そして今年の最下位は、埼玉県(29.1点)だった。川越や長瀞、鉄道博物館がある大宮など、観光地そのものの知名度は決して低くない。それでも観光意欲度に伸び悩むのは、「それらの人気スポットが埼玉県にある」と県名と結び付きにくいことが理由だ。

 田中社長は、埼玉県について「観光資源が乏しいわけではなく、川越や長瀞といった地名だけが先行し、県名のイメージにつながっていない。また、川越を訪れた人がその足で大宮にも立ち寄るという“県内回遊”が少なく、県内の複数エリアをあわせて楽しんでもらう仕組みづくりも、今後の課題になりそうだ」と指摘する。

観光意欲度を左右するのは
「新しいきっかけづくり」

 今年のランキングの傾向を見ると、順位を押し上げた県には、共通して「地域に注目が集まる新しいきっかけ」が存在していた。新施設開業やドラマの舞台、SNSでの写真拡散――。このような要因が、観光意欲度を大きく動かしている。

 田中社長は、「従来からある名所や食の魅力だけでなく、地域への関心が高まるきっかけを、どれだけ継続的につくれるかが、今後ますます重要になる。何もしなければ、観光意欲度は少しずつ下がっていく。だからこそ、新しい策略を打ち出している地域が順位の上昇につながっている」と話す。

 旅行ニーズが回復しつつある今、私たちもランキングを「人気投票」として眺めるだけでなく、「なぜその地域に行きたくなるのか」「どんな取り組みが行われているのか」に目を向けてみたい。地域の努力や工夫を知ることで、旅先での過ごし方や楽しみ方も、きっと変わってくるはずだ。

 来年以降の順位にも、この要素が大きく影響する可能性が高いだろう。

(フリーライター 西嶋治美)

>>観光で行きたい市区町村ランキング2025【完全版】は、12月22日(月)に配信予定です。