「営業利益1000億円死守」が
招いた負の連鎖
ニデックは、精密小型モーターを祖業とし、M&Aを原動力に車載・家電・工作機械へと事業領域を拡大してきた総合モータメーカーです。創業者の永守重信氏は、一代で売上高2兆円を超えるグローバル企業を築き上げたカリスマ経営者として知られてきました。
しかし、そのカリスマの陰で、長年にわたる会計不正が静かに積み上げられていたのです。
事の発端は、2016年頃にまで遡ります。
永守氏のトップダウンで設定された業績目標は、事業部門や子会社の実力を超えるものでした。目標未達は許されず、各拠点では在庫の水増し、固定資産の減損回避、売上の早期計上といった会計処理で帳尻を合わせるようになりました。
こうした不正会計の処理の結果として滞留した資産は、社内で「負の遺産」と呼ばれていました。本来であれば、これらは適切なタイミングで損失として処理しなければなりません。
ところが、負の遺産の処理は「セルフファンディング」――つまり、自部門の収益で負の遺産をカバーした上で業績目標を達成することが求められていました。そのため、ただでさえキツいノルマがある以上、負の遺産の処理は一向に進まなかったのです。
そんな中、2022年度の第4四半期、着任間もないニデック本社CFOの主導で、ようやく負の遺産を一気に処理しようという動きが起こりました。これまで負の遺産処理が進んでこなかったことを踏まえ、処理費用は各部門の業績に織り込まないこととしました。
しかし、ここにも条件がつきます。
CFO自身が最高業績管理責任者(CPO)と相談の上、「投資家に与える印象を勘案し、通期の営業利益は1000億円を下回らないようにする」との方針を立て、永守氏の了承を得ていたのです。
結果として、事業本部や国内グループ会社から約1662億円の負の遺産が申告されたにもかかわらず、処理されたのは約566億円にとどまりました。







