「相続税対策」の切り札が失速! 不動産小口化商品の節税メリットが薄れた理由
本連載は、相続に関する法律や税金の基本から、相続争いの裁判例、税務調査で見られるポイントを学ぶものです。著者は相続専門税理士の橘慶太氏で、相談実績は5000人超。遺言書、相続税・贈与税、不動産、税務調査、各種手続といった観点から相続の現実を伝えています。2024年から始まった「贈与税の新ルール」等、相続の最新トレンドを著書『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』から一部抜粋し、お届けします。

「相続税対策」の切り札が失速! 不動産小口化商品の節税メリットが薄れた理由Photo: Adobe Stock

「相続税対策」の切り札が失速! これからどうなる?

 本日は「相続と不動産」についてお話をします。年末年始、相続について家族で話し合った方も多いかと思います。ぜひ参考にしてください。

 相続税対策の手段として、ここ数年たびたび注目されてきたのが不動産小口化商品です。インターネットやYouTubeの記事広告などでも、「少額から始められる不動産投資」「相続対策にも使いやすい」といった言葉を目にしたことがある人は多いでしょう。人気エリアの不動産を一棟まるごと複数人で共有する仕組みのため、通常の不動産投資よりも手を出しやすく、相続の場面でも扱いやすい商品として広がってきました。

そもそも、不動産小口化商品とは?

 そもそも不動産小口化商品の特徴は、一口ごとの単位で保有できることにあります。たとえば一口100万円から購入できる商品であれば、まとまった資金がなくても参加しやすいですし、相続や贈与の場面でも分けやすいという利点があります。10口持っていれば、そのうち4口を長男、4口を次男、2口を三男に、といった形で細かく配分することもできます。現物の不動産のように「この土地をどう分けるか」で揉めにくく、口数で調整できるわかりやすさが人気の理由でした。

 ただ、その「使いやすさ」と「相続税対策として本当に有利か」は、分けて考えなければなりません。これまで不動産小口化商品が相続対策として関心を集めていたのは、単に小分けしやすいからだけではなく、評価の面で有利さがあったからです。ところが制度改正によって、そのうまみはかなり薄れました。

法律改正でどう変わった?

 今回の見直しで、とくに大きいのは、小口不動産の評価方法が厳しくなったことです。以前のように大きく評価額を圧縮できる余地が狭まり、基本的には亡くなった日の時価で評価する考え方に改められました。仮にその時価がはっきりしない場合でも、実務上は購入金額の8割程度を基準に計算する形になっていくため、以前のような大幅な評価引下げは期待しにくくなっています。つまり、「相続税を大きく下げる商品」として見ると、魅力はかなり後退したといっていいでしょう。

 そう考えると、「不動産小口化商品は相続税対策に効くのか」という問いに対する答えは、以前ほどは効かない、というのが実情です。少なくとも、節税効果を主目的にして飛びつくには、かなり慎重になるべき局面に入っています。もともと評価面のメリットが大きかったからこそ人気が出た商品である以上、その前提が変われば、以前と同じ熱量で選ばれ続けるとは考えにくいからです。人気そのものも、これまでより落ち着いていく可能性が高いでしょう。

 一方で、だからといって不動産小口化商品が完全に無意味になったわけではありません。この商品には、現物不動産よりも分けやすいという明確な特徴があります。相続人が複数いる家庭では、「不動産をどう公平に分けるか」が大きな悩みになりますが、小口で保有できる商品であれば、その点では扱いやすい面があります。贈与についても、口数単位で調整できるので、資産移転のしやすさという意味では依然としてメリットがあります。

 ただし、そこを評価するとしても、それはあくまで「分けやすさ」や「扱いやすさ」の話です。「節税効果が大きいから買う」という発想とは、少し分けて考えたほうがいいでしょう。制度改正後は、相続税対策としての決定打にはなりにくくなっており、購入するなら、その商品自体の収益性やリスク、換金性まで含めて冷静に見る必要があります。広告でよく見かけるから、少額で始められるから、という理由だけで選ぶには、やや注意が必要な商品になってきています。

(本原稿は『ぶっちゃけ相続【増補改訂版】』の一部抜粋・加筆を行ったものです)