バツの札を上げるビジネスパーソンPhoto:PIXTA

2024年5月、会計に詳しい専門家たちの間であるニュースが話題になった。東証スタンダード市場に上場するサンテックが提出した決算書について、監査法人が「意見不表明」を突き付けたのだ。企業としての信用度を大きく下げる最悪の結果に至ったのはなぜなのか。サンテックと監査法人の間に“深い溝”ができてしまったワケとは。(公認会計士 白井敬祐)

設立から70年超の大手企業の決算書に
「意見不表明」が突き付けられたワケ

 2024年5月、電気工事会社の大手、サンテックに激震が走った。

「意見不表明」――。

 聞き慣れない言葉かもしれない。

 意見不表明とは、企業が作成した決算書に対して、監査法人が「この決算書、信用できないよ!」とダメ出しをするようなものだ。

 これが出ると、投資家や取引先など、会社の財務状況を知るために決算書を見る人たちからの信頼を失いかねない。

 場合によっては、銀行からの融資が受けにくくなったり、株価が大幅に下落したりする。最悪の場合、上場廃止となり、会社が倒産に追い込まれることさえあるのだ。

 では、なぜサンテックは監査法人から「意見不表明」を突き付けられるような事態に陥ってしまったのだろうか。その経緯を見ていこう。

監査法人に“甘やかされてきた”ことが
悲劇につながった

 サンテックは、1979年からずっと、東邦監査法人という監査法人に決算書のお墨付きをもらっていた。実に40年以上にもわたる長い付き合いだ。

 そのため、東邦監査法人は、サンテックの事業内容、財務状況や社内事情などを熟知していた。監査に必要な情報は、サンテック側が資料をまとめていなくても、「監査法人側に集計するノウハウが備わっていた」(サンテックが公表した第三者調査委員会による「調査報告書【開示版】」より)のだという。よって、毎年、監査は滞りなく終了し、特に大きな問題も指摘されることはなかった。