どんなに痩せたくても「糖質制限はやめるべき」理由とは?
甘いものを我慢する。ご飯の量も減らす。健康のために「糖質制限」を意識している人は少なくないだろう。だが、「糖を減らせば減らすほど健康になる」と考えているとしたら、それは危険な勘違いかもしれない。元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する下村健寿氏は、著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』「極端な糖質制限」のリスクを指摘している。そして、糖のもたらす悪影響から脳や身体を守るために「もっと気をつけてもらいたいことがある」と説いている。なぜ糖質をゼロにするのは危険なのか。そして、私たちは日常生活で何に気を配ればいいのか。同書から一部を引用して紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

どんなに痩せたくても「糖質制限はやめるべき」理由・ナンバー1Photo: Adobe Stock

なぜ「糖質制限」はおすすめできないのか?

 現代日本の食事は、どうしても糖質過多になりがちだ。

 そのため、摂りすぎている糖質を適切な量に戻すことは重要である。

 とはいえ、「極端な糖質制限」は絶対にしてはいけない。

 そう語るのは、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏だ。

 下村氏は著書『糖毒脳』で、このように指摘している。

 脳は全身で最も糖をエネルギー源として使う臓器です。脳に糖がきちんと供給されないと、パフォーマンスが低下してしまいます。脳に適切なエネルギーを供給するためにも、糖の摂取は絶対に必要です。
――『糖毒脳』より引用

 また、糖質制限ダイエットのなかには、糖質の摂取をほぼゼロにする代わりに、脂質とタンパク質はいくらでも摂ってよいとするものもある。

 これも「非常に危険な考え方」だと、下村氏は指摘する。

 脂質とタンパク質を過剰に摂りすぎてしまった場合、腎臓への負荷が高まります。実際、動物実験で極端な糖質制限を課すと、実験動物の腎臓が腫大(異常に大きくなること)することが確認されています。
――『糖毒脳』より引用

食事で「今すぐやめてもらいたい」こと

 摂取している糖の量を適切にするために大事なのが、「糖」と意識しないで摂取している「糖質を含む食べ物」を避けることだと、下村氏は提案している。

 たとえば、糖尿病の患者さんを診ていると、たまに「せんべいはしょっぱいから糖じゃないですよね?」と聞かれることがあります。ですが、せんべいはもち米からできています。残念ながら、米は糖質の塊です。
「糖」というと甘いものを連想しがちですが、甘くなくても糖を含んでいる食べ物はたくさんあるのです。

――『糖毒脳』より引用

 そもそも、舌の甘味受容体は「単体の糖」しか感知することができない。

 一方で、舌より奥にある胃腸で「単体の糖」に分解されるような食物もある。

 そういったものを食べた場合、糖を摂取したことには変わりないが、甘さは感じないのだ。

 米だけではなく、ジャガイモなども含めて、主食となる穀物類には甘さに関係なく糖がたくさん含まれている。

 それらの「甘さを感じない糖」が、ジワジワと身体に蓄積していることもある。

 極端な「糖質制限」に挑むのではなく、こういった「隠れ糖質」を食べるのをやめることが、身体や脳の健康のためには効果的なのである。

(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。