将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)

認知症になりやすい人の「仕事中の習慣」・ワースト1Photo: Adobe Stock

「糖質中心」の食生活のリスク

 慌ただしい朝、朝食を菓子パンで済ませて家を出る。
 ランチをとる時間がなく、コンビニ弁当をかき込む。
 仕事の合間に、お菓子をつまんで束の間の休憩をとる。

 忙しい日々を送るビジネスパーソンにとって、こうした食生活は決して珍しいものではない。

 食べ終わったあと、少しだけ罪悪感がよぎるかもしれない。

「少し太るくらい、いいでしょ」
「明日の食事を減らせば大丈夫」

 そうやって自分を納得させる。

 しかし、こうした習慣の先に待っているのは、単に太ることだけではない。

 元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳』で、糖質中心の食生活のリスクについて次のように指摘している。

 パン、ご飯、麺、スイーツやスナック菓子。そういった食事には、糖分や糖質が多く含まれていますが……「糖」を摂りすぎると脳が崩壊していくのです。
――『糖毒脳』より引用

 糖の摂りすぎは、太る、眠くなる、虫歯になるといった問題として語られることが多い。だが、糖の影響によって脳の機能そのものが低下していく可能性があるというのである。

 しかも、それは突然起きるわけではない。
 少しずつ、静かに進行していくと言う。
 だからこそ、多くの人が気づかないまま習慣を続けてしまうのだ。

アルツハイマー病と糖尿病の「意外な関係」

 糖が、脳の機能を破壊していく。これは著者独自の主張ではない。
 下村氏は米国における調査を例に、下記のように述べている。

 米国ミネソタ州南東部の地域住民を対象とした大規模研究では、アルツハイマー病患者の81%が2型糖尿病、または糖尿病予備群であったと報告されています。
 この数字は、過剰な「糖」が糖尿病もアルツハイマー病も引き起こしているという事実を示しています。
 実際、2つの疾患は「原因が同じ病気」と言っても過言ではありません。
 アルツハイマー病を「3型糖尿病」と考える専門家は世界に数多く存在します。

――『糖毒脳』より引用

 集中力が続かない。
 思考がまとまりにくい。
 物忘れが増えた気がする。

 こうした変化を、「年をとったから仕方ない」と見過ごしていないだろうか。じつはその背景には、忙しい日々の中でついやりがちな「糖質過多な食習慣」という要因が潜んでいるかもしれないのだ。

 もちろん、糖を完全に排除すべきという話ではない。糖は生活の楽しみでもあり、エネルギー源でもある。重要なのは、糖とどう付き合うかだ。その点についても、同書は指針を示している。

 日々の何気ない食事の選択は、小さなものに見えるかもしれない。しかし、その違いはやがて、思考力や健康寿命の差として現れてくる。いまの食生活が、あなたの「脳の未来」をつくっているのかもしれない。

(本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)

下村健寿(しもむら・けんじゅ)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。