将来的に5人に1人がなると言われている「認知症」。運や遺伝によってなると考える人も多いが、じつは意外な習慣によって、そのリスクを高めてしまうことがわかった。その影響は20代から始まっているとも言う。
その事実を紹介したのが、オックスフォード大学の研究員として世界的難病の治療法の発見に貢献し、現在は医師としても活躍する脳と糖の専門家である下村健寿氏の著書『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』だ。認知機能を崩壊させる「黒幕」の正体や、そのメカニズム、そして脳を守るための習慣を紹介した同書から、一部を抜粋・編集し紹介しよう。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂)
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認知症になりにくい人の「食事の習慣」
認知症を予防するために、特定の健康食品やサプリメントを取り入れている人は少なくない。
「記憶力に効く」
「脳の老化を防ぐ」
そんな言葉に惹かれて、特定の食品を積極的に摂っている人もいるだろう。
しかし、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏は著書『糖毒脳』で、こうした考え方に注意を促している。
いかなる食品であれ、特定の食品を摂取するだけでアルツハイマー病を劇的に予防できる、あるいは発症した認知症が奇跡的に回復するというような科学的根拠は、現時点では残念ながら確認されていません。
――『糖毒脳』より引用
つまり、「これさえ食べれば安心」という食品は存在しないということだ。
7000人の調査が示した「ベスト1の食事習慣」
一方で、下村氏は同書でこうも述べている。
むしろ認知症予防において科学的根拠がより強く示されているのは、特定の食品単体よりも「食生活のパターン全体」です。
――『糖毒脳』より引用
その具体例として同書では、野菜、果物、全粒穀物、ナッツ、豆類、魚、オリーブオイルなどを中心とし、赤肉や加工食品を控える「地中海食」と呼ばれる食事パターンが紹介されている。
複数の大規模疫学研究や介入研究において、認知機能の維持や認知症リスクの低減と関連していることが報告されているそうだ。
その裏付けとなる研究結果も紹介されている。
心血管疾患のリスクを持つ7000人以上の高齢者を6年間にもおよぶ長期にわたって追跡した「PREDIMED」という調査が、スペインで行われました。
その結果、地中海食を摂取した人は心血管疾患による死亡リスクが低下しただけでなく、認知機能テストのスコアが良好であることがわかりました。また、遺伝的リスクからは独立して、認知症のリスクが低下していることが示されました。
――『糖毒脳』より引用
これらの食事パターンによって、多様な食品が持つ栄養素や機能性成分が相乗的に作用することで、脳の健康が守られると考えられている。
まるで魔法の薬のように、特定の食品を摂取するだけで認知症を予防・治療することはできない。
多種多様な食材をバランス良く食生活に取り入れ、全体としての栄養バランスを最適化する。
これこそが、認知症予防として最も大事なことなのだ。
(本稿は、『糖毒脳ーーいつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です)
福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。








