「この人、経歴は完璧なのに、なぜか引っかかる」――面接や商談で、理由は言えないのに“もやっとした”経験はないだろうか。実はその感覚こそ、AI時代に最も価値を持つ人間の武器かもしれない。1000社・3000名のビジネスパーソンのAI活用を見てきた、株式会社ガラパゴス代表・中平健太氏の著書『AIで終わる人 AIで化ける人』(ダイヤモンド社)から、できる人だけが大切にしている“ある感覚”を紹介する。

AIで終わる人Photo: Adobe Stock

「直感はよく間違えるが、違和感は必ず間違えない」

著者が会社経営で常に大事にしている言葉がある。
「直感はよく間違えるが、違和感は必ず間違えない」。

たとえば採用の場面。
「東大卒で前職は証券会社、経歴は申し分ない」と思っても、面接のどこかで小さな“違和感”を覚えたら、その感覚を何より大切にするという。

直感は、感情や第一印象に左右されやすい。
一方で違和感は、もっと深いところから湧いてくる。それは決して気のせいではない、と著者は言う。

私たちの脳には「前帯状皮質(ACC)」という領域があり、ここが“予期していたことと現実のズレ”を検知すると、警戒モードを発動します。
つまり、「なんか変だな」と感じるのは偶然ではなく、脳が“パターンの異常”を察知している瞬間なのです。


――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

つまり「なんか変だな」は、過去の膨大な経験を照合した脳が、まだ言葉にならない矛盾を先に見つけているサインなのだ。
理屈で説明できなくても、脳はすでに「これは少しおかしい」と信号を出している。

AIは「整ったもの」に強く、「違和感」に鈍感

そして、この違和感はAI時代にこそ価値を増す。
AIは過去の膨大なデータから「最も確からしい答え」を導くのが得意だ。
だがその答えは、常に“過去の延長線上”にある。

AIは統計によって答えを導き出します。
“中央値”的な、答えを導くことはAIが得意です。
AIは「整っているもの」には強いが、「違和感を感じるもの」には鈍感です。
だからこそ、人間に残された最大の価値は、この“違和感を感じ取る力”なのです。


――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

データが綺麗に揃いすぎている時、全員が賛成している会議。
そんな“整いすぎた正解”にかすかな引っかかりを覚えられる人こそ、変化の波を先取りできる。
著者は、その違和感をそのままAIにぶつけ、「この結論が大失敗するとしたら、どんな想定外がありえる?」と問わせて言語化することを勧める。

感じる力と、確かめる力。
その両方がそろって初めて、違和感は“未来を先読みする思考の武器”になる。

(本記事は、書籍『AIで終わる人 AIで化ける人』を一部を抜粋、編集したものです。)

中平健太(なかひら・けんた)
株式会社ガラパゴス 代表取締役社長
早稲田大学理工学部卒業後、プロセス改善コンサルティングファームを経て2009年に創業。100を超えるスマホアプリ開発などを行うなかでデザイン産業の課題に直面し、いち早くAI技術の研究開発をスタート。2019年にAIを活用したクリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」をリリース。同サービスはのべ1000社・3000名以上に導入され、企業の業務フローと、個人の思考や働き方に根本的な変革をもたらしている。「ICCサミット KYOTO 2022 カタパルト X」優勝など起業・スタートアップ関連の賞を多数受賞。テレビやウェブメディアでも広く取り上げられ、1万人超への講演実績も持つ。現在は累計約24億円の資金調達を実施し、AI技術の社会実装を牽引している。