自己肯定感を高めよう、ありのままの自分を受け入れよう――書店にもSNSにも、そんな言葉があふれています。けれど、その心地よさが、思わぬ落とし穴になることもある。話題の書『AIで終わる人 AIで化ける人』(中平健太・著、ダイヤモンド社)から、伸び続ける人の考え方を読み解く。

AIで終わる人Photo: Adobe Stock

「今のままで十分」と思った瞬間に

「自分はこれで十分やれている」「今のやり方が性に合っている」
そう感じて、ほっと一息つく。それ自体は、決して悪いことではありません。
けれど、その満足が長く続くと、人は新しい情報を取り込むのを、いつのまにかやめてしまいます。

今の自分を“完成した城”だと思って守りに入ると、城壁の外で何が起きているかが、見えなくなります。
その間にも、技術は驚くほどの速さで進み、昨日まで「すごい」とされたスキルを、次々とありふれたものに変えていく。
本当に怖いのは、自信がないことではありません。
「今の知識やスキルのままで、この先も戦える」と、信じて疑わないことのほうです。

目指すのは「完璧な自分」より「進化する自分」

では、どう構えればいいのでしょうか。
ヒントになるのは、「完成」を前提にしない、自分の捉え方です。

AI時代に目指していくべきスタンスは、一度作って終わりの「完璧な自分」ではなく、常に更新され続ける「進化する自分」なのではないでしょうか。
昨日までの正解に固執せず、自分の能力や知識を常に疑い、足りない部分は柔軟に書き換えていく。


――『AIで終わる人 AIで化ける人』より

ソフトウェアに完成形がないように、自分のことも“ずっと更新され続けている途中のもの”と考えてみる。
ここで大切なのは、否定するのは「人格」ではなく「機能」だ、という線引きです。

「資料作成が遅い自分はダメだ」と落ち込む必要はありません。
「資料作成という作業のほうは手放そう」と、切り替えるだけでいいのです。

そしてもう一つ。
昨日の自分を疑えるのは、「自分なら変われる」という土台の自信があるからこそ、です。

ありのままにしがみつくのでも、自分を責め続けるのでもなく、軽やかに脱ぎ替えて前へ進む。
その柔らかさこそが、これからの本当の強さになっていくのではないでしょうか。

(本記事は、書籍『AIで終わる人 AIで化ける人』を一部抜粋、編集したものです。)

中平健太(なかひら・けんた)
株式会社ガラパゴス 代表取締役社長
早稲田大学理工学部卒業後、プロセス改善コンサルティングファームを経て2009年に創業。100を超えるスマホアプリ開発などを行うなかでデザイン産業の課題に直面し、いち早くAI技術の研究開発をスタート。2019年にAIを活用したクリエイティブ制作・改善サービス「AIR Design」をリリース。同サービスはのべ1000社・3000名以上に導入され、企業の業務フローと、個人の思考や働き方に根本的な変革をもたらしている。「ICCサミット KYOTO 2022 カタパルト X」優勝など起業・スタートアップ関連の賞を多数受賞。テレビやウェブメディアでも広く取り上げられ、1万人超への講演実績も持つ。現在は累計約24億円の資金調達を実施し、AI技術の社会実装を牽引している。