一見すると丁寧に聞こえる言葉でも、使う場面を間違えると相手に違和感や失礼な印象を与えてしまう。特に「お力添え」「ついでに」「わざわざ」といった言葉は、誰に・どんな場面で使うかによって受け取られ方が変わる。とはいえ、ビジネスで信頼を築くためには、言葉のニュアンスや文脈まで意識することが大切だ。この記事は、書籍『気づかいの壁』の著者・川原礼子氏に記事を書き下ろしてもらった。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
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場面を間違えると感じが悪くなる言葉
先日、こんな営業メールが届きました。
「川原様のお力添えをさせていただきたく、ご連絡いたしました。」
思わず、読み返してしまいました。
「お力添え」とは、相手が自分を助けてくれたときに使う言葉です。
「お力添えをいただき、ありがとうございます」が本来の使い方。
ところが自分を主語にした途端、言葉の向かう先が逆になってしまいます。
「お力になれればと思い、ご連絡させていただきました。」とすれば、すっきり伝わりますね。
こうした「言葉は正しいのに、場面が違う」というミスは、実はビジネスシーンの各所に潜んでいます。
今回は、本人は丁寧なつもりでも、受け手は違和感を覚える。さらに言えば、印象まで悪くしかねない表現を、さらに2つ紹介しましょう。
「ついでに」
「コピー機に行くついでがあったので、◯◯さんの分の資料も持ってきました!」
こう言われると、相手は気持ちよく「ありがとう」が言えます。
「わざわざしてもらった」という申し訳なさを消してくれる、思いやりの表現です。
ところが、場面が変わると途端に逆効果になります。
たとえば、立ち寄った取引先で、「お越しいただき、ありがとうございます」とお礼を言われた場面。
ここで「近くまで参りましたので、そのついでです。」と返してしまうと、相手は一瞬、「私はついで、なのか?」と感じます。
取引先に負担をかけないよう伝えたつもりが、相手に「優先順位の低さ」を露呈することになるのです。
「ついで」が出そうになったら、こう言い換えてみてください。
「ちょうど近くまで参りましたので、ぜひ、お顔を拝見したくお寄りしました。」
「お顔を拝見したい」に「ぜひ」までつけられたら、誰でも嬉しいですよね。
「わざわざ」
「ついでに」とは対照的に、相手の手間を強調するのが「わざわざ」です。
「悪天候の中、わざわざお越しいただきありがとうございます。」
遠方から来てくれた方や、時間を割いてくれた相手への感謝としては、申し分ない表現です。
しかし、相手が目上のとき。
例えば上司にチェックしてもらった際に「わざわざご確認いただきありがとうございます」と使うと、話が変わります。
「わざわざ」には、「本来しなくてもいい苦労をあえてする」という意味が込められています。
お母さんの手料理に「わざわざ作ってくれてありがとう」とは言わないように、目上の人の仕事や配慮に「わざわざ」をつけると、受け手によっては妙な違和感を覚えます。
シンプルに「ご確認いただき、ありがとうございます」。
一言添えるなら「お忙しいところ、ご確認いただきありがとうございます」で十分です。
こうした「もやっとする」感覚を、見逃さないことです。
言葉は意味だけでなく、文脈と方向で意味が変わります。
「なんとなく引っかかる」
「読み返してしまった」
そういう小さな感覚は、たいていの場合、正しいサインです。
迷ったときはすぐ意味を調べ、それでも確信が持てなければ別の表現に替える。
それだけで、あなたの言葉はぐっと感じよく洗練されますよ。
株式会社シーストーリーズ 代表取締役
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。著書に5万部を突破した『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)がある。




