全世界45言語に翻訳され、累計600万部を突破したことで大きな話題を呼んでいる書籍がある。俳優や作家として活動する松井玲奈さんは、その本に描かれたエピソードに触れ、「自分の思いを他者に伝えることが、思わぬチャンスや縁に繋がる」と実感したそうだ。
本連載では、松井さんに表現者としての現在地、そして迷いながらも進み続ける原動力についてインタビューした内容を全4回でお届けする。第2回では、「運がいい人」にだけ見られる共通点や、やりたいことを形にするために意識していることについて話を聞いた。

「なぜか強運な人」が無意識のうちに実践している驚くべき習慣Photo:Adobe Stock

偶然を引き寄せるために必要なアクション

――『世界の果てのカフェ』には「運がいい人の法則」が紹介されています。本書の中で、印象に残ったエピソードを教えてください。

松井玲奈(以下、松井):「運」という意味では、作中に登場する「広告業界で働く女性」のエピソードは、自分を投影するように深く頷きながら読みました。

 その女性は、ある大きな顧客を獲得しようとしていた。多くの人が挑戦しては獲得を断念していく中、彼女は「どうしても獲得するんだ」と心に決めるんですよね。そんなある日、プレゼンの準備をしていた最中に大学時代の友人から電話がかかってきて、近況報告や仕事の話をします。

 獲得したいと願っている顧客の話になったとき、その友人を介して思いもよらなかった人物との繋がりが生まれる……といった話です。

 つまり、やりたいことが明確にある人、この本で言うところの「自分の存在理由を満たそうと行動する人」にはチャンスが巡ってきやすい。自分自身にも身に覚えがありましたし、そうやって道を切り拓いていく方を間近で見たこともありましたので、ものすごく納得したんです。

――道を切り拓いていく方とは、どういった方ですか。

松井:ある舞台を観に行った知り合いの話なのですが、その方はどうしてもその演出家さんの作品に出たいという強い思いを持っていて。公演後、直接ご本人の元へ行って「あなたの作品に出たいです」とストレートに伝えたそうなんです。

 そうしたら「いいよ」と受け入れられ、本当に出演することになった。その光景は、まさに意志の力が現実を動かす瞬間そのものでした。自分の意思を伝えることは大切なことですよね。

やりたいことに挑戦するために工夫していること

――やりたいことを宣言するというのは、とても勇気がいることだと思います。

松井:私の場合、「やりたいけれど、まだ人に言うには勇気が足りない」という段階では、まずノートに書き出すようにしています。ウィッシュリストのように、「今年はこれを絶対に形にする」と記して自分一人で挑戦してみる。半年ほど継続してみて少しでも成長を実感できたとき、初めて自信を持って人に話すんです。

 例えば英語の勉強であれば、「喋れるようになりたいんだ」と人に言うと、「そんな簡単にできないよ」と言われるかもしれません。でも、「実は半年間、英語の勉強を頑張っていたんだよね」と結果を伝えれば、受け入れてくれる人は増えると思うんです。

 小さな進捗だったとしても積み重ねてきたことは事実です。こっそりと自分の中だけで頑張ってきたものを、満を持して人に話す。それは、自分自身で自分の背中を押せる行動なのかなと思います。

――やりたいことはあるのに一歩踏み出せない人は、自分の弱さを表に出せない人と近い部分があるように思います。松井さんは、ご自身のエッセイで「そこまで言っちゃうんだ」と驚いてしまうようなことまで書かれている印象です。そうした自己開示には抵抗がないのでしょうか。

松井:根底にあるのは、「正しく自分を理解してほしい」という、ある種の自分本位な願いなんです。こうして面と向かって対話をすれば、少なからず人となりや特性を分かってもらいやすいですよね。

 でも、芸能のお仕事をしていると、決まったイメージで見られてしまうことが多くて…。そこに違和感を覚えることが何度もありました。世間が持つ固定観念を壊し、アップデートしていくための武器が、私にとっては「書くこと」でした。心の奥底で考えていること、ざらついた感情も含めてブログやエッセイなどに綴ることで、「松井玲奈」という存在を多面的に見てもらいたい。その積み重ねが、今の自分を支えています。

 表に出ている人たちも世間と変わらず普通に生活していて、嬉しいことも悲しいこともあります。カッコ悪い部分も含めて、できる限りありのままの言葉を尽くしています。

――「広告業界で働く女性」のエピソードでも、自分の思いを他者に伝えることの重要性が紹介されています。

松井:エピソードの中で、「あなたが誰かに何かを伝えたら、その人が他の人に伝えて、その人がさらに他の人に伝えるの」「やがて、あなたの状況を理解し、助けてくれる可能性のある人が大勢になるの」という記述がありました。

 私もマネージャーさんに「○○な仕事はないか」「××なイベントをやりたい」と伝えることがあります。熱量を持って伝えたことは覚えていてくださって、実現のために動いてくださるんです。

 ある意味、チームワークだと思うんです。自分のビジョンを共有しなければ、事務所もマネジメントするに当たって、どの方向に舵を切るべきか判断できません。実現可能かどうかは脇に置いておいて、まずは「これがやりたいんだ」と表明すること。それが全てのスタートラインだと思います。

 また、私も人から「○○を考えているんだ」「××をやっている人を知らないかな」などと相談されたとき、熱量が高ければ高いほど力になりたいと心を動かされます。「この人とこの人をつなげたら面白くなるかもしれない」と考えることもある。まさに『世界の果てのカフェ』に書いてある通りの話ですね。

(本稿は、ジョン・ストレルキー著『やりたいことが見つかる 世界の果てのカフェ』<鹿田昌美訳>に関連した特別インタビュー記事です)

「なぜか強運な人」が無意識のうちに実践している驚くべき習慣松井玲奈(まつい・れな)
1991年生まれ、愛知県出身。2008年デビュー。
近年の主な出演作は、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」、大河ドラマ「どうする家康」、連続テレビ小説「おむすび」ほか。
2019年に小説家デビューし、作家としても活動中。
最新作は『ろうそくを吹き消す瞬間』。