「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。
そんな木下氏が考える「業績絶好調なのに人が辞めていく職場の共通点」とは? ライターの照宮氏が報告する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
Photo: Adobe Stock
増え続ける業務と積み上がらない手ごたえ
勤めている会社が、上場を目指して動き始めたとき、経理まわりを担当していたのは私ひとりだった。
上場審査に対応するために作成しなければならないデータは膨大で、日々の業務だけでも正直手一杯だった。
目の前の業務を片づけることに、気力も時間も削られていく。社員全員が上場を望んでいるわけでもなく、そもそもこの体制で上場を目指すこと自体、無理があると思っていた。
忙しい日々を過ごしているうちに、自分がこの会社で何をしているのかさえ、正直わからなくなってきた。
目先の数字の奥に、何を見ていたか
実業家でありながら第一線のビジネス書著者でもある木下勝寿氏は、著書『地頭スイッチ』の中でこう述べている。
最上位目的を見据えたうえで下位目的を選び、手段を設計できる人こそ長期的に正しい判断を下せる人です。
――『地頭スイッチ』より
上場という最上位目的はあった。
しかしその目的を見据えたうえで、組織をどう動かすか、人をどう配置するかという手段の設計ができていなかった。
上場すること自体が目的になり、その先を見る余裕がなかったのだと思う。
私は道半ばで辞めることとなったが、その後、結局上場の話は立ち消えになったという。
今や当時一緒に働いていたメンバーは、会長以外誰も残っていない。
貴重な具体的な「思考の型」
目先の成果を追うことと、組織を続かせることは、本来セットで考えなければならない。
しかし、忙しい現場ではどうしても目先のことに意識が向いてしまうものだ。本書はその視点を、具体的な思考の型として示してくれる。
仕事術の本だと思って手に取ったが、読み終えてみると、組織と判断の本質まで考えさせられる一冊だった。








