ベストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者の森武司氏は、創業以来18年連続増収増益・年商146億円を「仲間力」一本で実現してきた経営者である。
今回話を聞いたのは、この『スタートアップ芸人』に深く共感する経営者・小田原宗弘氏だ。仙台を拠点に美容・コンサルなど複数事業を手がけ、父の会社では30年間、採用と育成に向き合い続けてきた。その小田原氏は、職場で扱いに困る「いつも怒っている社員」を、ある一つの問いかけで変えたという。何を聞いたのか。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

職場にいる「いつも怒っている社員」を変える、たった1つの問いかけとは?Photo: Adobe Stock

正直、面談したくなかった「いつも怒っている社員」

――職場で扱いに困る社員と、どう向き合ってきましたか?

小田原宗弘(以下、小田原):前の会社にいわゆるトラブルメーカーの女性社員がいたんです。営業アシスタントでしたが、営業担当者とうまくいかず、いつも揉めていました。

その彼女の上司から「一度面談してあげてほしい」と頼まれたんですが、正直、乗り気じゃなかったんです。いつも怒っている人だったので、何を話しても揉めるだけだろうなと。今思えば、扱いにくい人だと決めつけていたのは、自分のほうだったんですよね。

――その面談で、何か特別なことをしたんですか?

小田原:たまたま雑談の中で、心理学の話になったんですよ。怒りの感情のメカニズムを説明した図があったんですが、それを彼女に見せたんです。

そうしたら「そうなってるんですね」と驚いた様子で、その場で「電話のところに貼っておきます」と言ったんです。
それを見て「あ、この人には話が通じる、素直なんだ」とわかった。
それまでレッテルだけで見ていたんですが、その瞬間に自分の見方のほうがズレていたと気づきました。

「本音は何なの?」と聞き続けた

――そこから、どんな話をしていったんですか?

小田原:その図を入口にして、
「怒っているように見える人って、実は自分の怒りの感情を無視していることが多いんですよ。無視しているから、相手にぶつけてしまうんです」
という話をしました。

本人は冷静なつもりで攻撃しているんですが、その怒りを認めないまま相手にぶつけてしまっている。だから、まず「自分は今、怒っているんだ」と認めるところから始めようと話しました。

――本人はそれを受け入れたんですか?

小田原:最初は「相手が悪い」と自分を正当化していました。
でも、そこで私が聞き続けたのが「本音は何なの?」という問いだったんです。
「本当はどう感じてるの?」「本音は何なの?」と、何度も角度を変えて聞いていきました。

そうしたら、ポロッと出てきたんです。
「自分はやっぱり劣等感を感じていて、人から仕事できない奴だと思われたくない。だから相手よりマウントを取らなきゃいけないという気持ちでケンカになっていた」と。

――根っこは劣等感だった。

小田原:そうなんです。本人もそれに気づいた瞬間、ガラッと変わった

それまで毎日のように衝突していた営業担当者のところに、彼女が自分から謝りに行ったんですよ。私は正直、それを見たとき驚きました。
「人って、本当に変わるんだな」と。
最終的には周りから「なくてはならない社員」と言われるまでになりました。

「問いかけ」が効く人と、効かない人の差

――同じ問いかけをしても、変わる人と変わらない人がいると思います。何が違うんでしょうか?

小田原:素直さだと思っています。
心理学の図を見たときに、すぐ電話のところに貼り出した。あの行動が全てを物語っていました。素直に受け取れる人は、自分のなかにある本当の感情にも向き合える。だから問いかけが届くんです。

――逆に、届かない人はどういう人ですか?

小田原:聞いた話を「でも」で返す人ですね。
せっかく自分を客観視するチャンスがあっても、すぐに正当化に戻ってしまう。そういう人を無理に変えようとしてもしんどいだけなので、私はあまり追いかけません。

――でも、最初は誰でも「でも」で返してしまうところからスタートしませんか?

小田原:そうなんです。だから1回であきらめない。彼女もその後、毎朝早く出社して相談に来るようになりました。「また感情をぶつけてしまいました」「こういう時どうしたらいいですか」と、少しずつ自分を客観視できるようになっていったんです。

――振り返ってみて、いまどう感じていますか?

小田原:彼女を変えたというより、私自身の見方が変わったんだと思っています。扱いにくいと思っていた相手にも、本音や劣等感や、助けを求めている感情がちゃんとあった。「本音は何なの?」と聞き続けなかったら、私は最後までそれに気づけなかったんです。

森武司さんの『スタートアップ芸人』にも、「仲間をどう見るか」で組織が変わっていく話が数多く出てきます。人間関係に悩んでいる方ほど、重なる部分があるかもしれません。

(本書は『スタートアップ芸人 ―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関する特別投稿です。)