「地頭」を鍛えたいと思っても、今さら変えられないものと思われがちだ。だが、多くの社員を育成してきた東証プライム上場社長の木下勝寿氏は新刊『地頭スイッチ』で、「地頭はセンスではない。スイッチの押し方さえわかれば変えられる。AI時代になればなるほど『地頭』が重要になる」という。
そんな木下氏が考える「スキルがあるのに評価されない人が見落としていること」とは? ライターの照宮氏が報告する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)

「スキルがあるのに評価されない人」が見落としていること・ワースト1Photo: Adobe Stock

素直にへこんだ経験

ライターとしてインタビュー記事を書いていた頃、速く納品することが誠意だと思っていた。
取材が終わればすぐに書き起こし、構成を組んで、できるだけ早く入稿する。
取材相手のチェックが入る案件では、早めに出して直しを受けるサイクルが自分の中で確立していた。

ある著者へのインタビューを担当したとき、いつも通りに構成を組んで入稿した。
しばらくして編集さんから、「わかりやすいのですが、書籍の趣旨と離れてしまっています」と返信が来た。結局、全部書き直しになってしまい、初めての経験に素直にへこんだ。

仕事の「正解」は、何によって決まるのか

どんな局面でも即断即決できる思考アルゴリズム(考え方のクセ)を持つ木下勝寿氏は著書『地頭スイッチ』でこう述べている。

「仕事のやり方の正解」はスキルや努力量ではなく、「その仕事が採算とどうつながっているか」によって決まるのです。
自分の仕事が短期的な効率を求められているのか、長期的な価値創出を求められているのかがわかっていないと、正しい判断はできません。
――『地頭スイッチ』より

速く納品することは、効率の話だ。
でも、あの記事で求められていたのは、書籍の世界観を読者に届けることだった。
どれだけ早く提出しても、その目的から外れていれば、仕事としては正解にならない。
問題はスキルでも速さでもなく、この仕事が何を求めているかを見ていなかったことだ。

努力の方向を確かめたい人へ

採算の構造を理解するとは、自分の仕事が何のために存在しているかを常に確かめることだと思う。求められているものが違えば、正解も変わる。

あのとき書き直しになったのは、自分の中の正解を信じて疑わなかったからだ。
本書は、仕事の評価基準がなぜ状況によって変わるのかを、採算という軸で整理してくれる。自分の動き方を見直したい人に手に取ってほしい一冊だ。