株価が長年低迷する倒産寸前の会社に投資し、資金を約3倍にする――。若き日のウォーレン・バフェットは、そんな離れ業を成し遂げていた。『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』では、割安株を本物の利益に変えるための方法が、実際の投資記録から解説されている。本連載では、本書の内容から、ウォーレン・バフェットの投資術をお伝えしていく。(構成:ダイヤモンド社書籍編集局)

投資家のイメージPhoto: Adobe Stock

倒産寸前の会社が化けた訳

 割安だと思って買った株が、いつまでも割安なまま放置される。それどころか業績が悪化し、含み損だけが膨らんでいく――。バリュー株投資に挑んだことのある人なら、一度は味わうのではないだろうか。

 本書は、バフェットが最初の1億ドルを築くまでの道のりを、投資案件ごとに検証した一冊だ。

 なかでもネブラスカ州の風車・かんがい設備メーカー、デンプスター・ミルへの投資は、「安く買った株を、どう利益に変えるか」という問いに具体的なヒントを与えてくれる。

 本書によれば、同社は売り上げの低迷と重い債務で倒産寸前に追い込まれていた。しかしバフェットは、純資産が1株75ドルもある同社の株式を平均28ドルで買い集め、最終的に80ドル相当の価値へと変え、投じた資金を約3倍にしたのである。

眠れる資産を見抜く方法

 本書によれば、デンプスターでは株主資本の多くが在庫や売掛金に姿を変え、利益をほとんど生まないまま放置されていた。

 そこでバフェットは、盟友チャーリー・マンガーの紹介で得た経営者ハリー・ボトルを送り込み、在庫の圧縮と不採算部門の整理を断行させた。

 その結果、事業に縛られていた資金が解放され、株式や債券の購入に回された。420万ドルあった在庫は1年で160万ドルまで減り、有価証券のポートフォリオは230万ドルに膨らんだという。本書には次のように書かれている。

新たに資金を調達したわけでもないのに、一九六三年の夏にデンプスターは資産のたったの六割しか製造事業に活用していなかった。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 つまり同社には、眠ったままの過剰な資本が大量にあったのだ。

 株主の資金を無駄づかいしている企業はいまも存在し、資本の使い方が改まれば株価は見直される。この視点は、割安株の中から「化ける株」を選び出す手がかりになるだろう。

隠れた価格支配力を探せ

 もう1つの着眼点が、値上げの余地だ。

 ボトルは再建の過程で、同社が唯一の供給者である商品について価格を最大500%も引き上げた。それでも顧客は離れず、損益分岐点はほぼ半分に下がり、収益は劇的に改善したのである。

 著者はこの点について、次のように述べている。

デンプスターの経営者はそれまで、可能であったにもかかわらず価格を引き上げる勇気がなかった。企業はある程度顧客をつかまえれば、価格を引き上げられる。(『ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ』より)

 顧客をしっかりつかんだ商品を持つ会社は、決算書には表れない隠れた価格支配力を秘めている。身近な商品の値上げに客がついてきているかを観察するだけでも、その力を推し量るヒントになるかもしれない。

 そして忘れてならないのが買値だ。本書には、取得価格が非常に魅力的であれば平凡な売却価格でも儲けられる、というバフェットの言葉が紹介されている。

 さらに著者は、投資結果の評価には少なくとも3年の期間が必要だというバフェットの考えも伝えている。

 安い価格で仕込み、数年単位でじっくり待つ。派手な成長株を追いかけなくても、資産の使い方と価格の力に注目すれば、投資で勝つことは可能なのだ。