世界1200都市を訪れ、1万冊超を読破した“現代の知の巨人”出口治明元APU学長。宮部みゆき氏などから絶賛されている出口氏の『哲学と宗教全史』をもとに、哲学と宗教の視点から探る「レヴィ=ストロースの思想」とは? ライターの照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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社会の「進歩」は一方向なのか?
以前インドネシアで暮らし始めた頃、道路はいつも渋滞し、歩道が整っていない場所も多く戸惑った。日本ならもっと快適でスムーズなのにと感じていた。
けれど、街には若い人が多く、どこへ行っても活気がある。
人々はよく笑い、家族や友人と楽しそうに話をしていた。
便利さでは日本が上に見えるのに、街から受ける印象はむしろインドネシアのほうが明るく元気だった。
技術や経済が発展するほど、社会は必ずよい方向へ進むのだろうか。
この考え方を疑ったのが、『哲学と宗教全史』(出口治明著)で紹介されているフランスの文化人類学者クロード・レヴィ=ストロース(1908~2009)である。
人間は社会の構造の中で、そこに染まって生きるのであると、彼は考えました。
常に進歩があるわけではない。
先進国ばかりではなく、未開の社会もあるし、人間は社会に合わせて生きていくことしかできないという考え方です。
――『哲学と宗教全史』より
レヴィ=ストロースは、西洋社会を人類の到達点とみなし、ほかの文化を発展の途中に置く見方に疑問を投げかけた。
人の考え方や行動は、自分の意思だけで決まるのではなく、その社会の文化や慣習にも大きく左右される。
何を「進歩」と評価するかさえ、所属する社会によって形づくられている。
だからこそ、自分が当たり前と思っている基準も、決して普遍的なものとは限らない。
社会を見る「ものさし」が変わる!
今は、国や社会の発展が所得や技術力などで比べられることが多い。
もちろん、数字にすれば違いはわかりやすい。
けれど、そこで暮らす人の満足や、社会の活気までは数字だけでは見えにくい。
ある社会を「進んでいる」「遅れている」と一列に並べる前に、そこで人々が何を大切にして暮らしているのかを見る。
レヴィ=ストロースの思想は、社会の豊かさを一つの基準だけで判断できないことを教えてくれる。





