老眼は「小さな字が読みにくくなるだけ」の問題なのか。老眼対策の専門家・伊勢屋貴史さんは、そうではないと言います。40歳以上の人口、仕事への影響、消費活動などから考えると、「老眼による経済損失は80兆円規模に達する可能性すらある」と独自に試算。なぜ目の老化が日本経済の問題になるのでしょうか。

老眼の経済損失は「80兆円規模」? 眼科医が「国家戦略で老眼対策を」と訴える理由Photo: Adobe Stock

花粉症より「老眼」のほうが経済への影響は大きい?

――伊勢屋さんは、老眼は個人の健康問題だけではなく、日本経済の問題だと考えているそうですね。

伊勢屋貴史(以下、伊勢屋) そうなんです。

 たとえば花粉症は、経済への影響が大きいことでよく知られています。

 それと比べて考えてみると、老眼は40歳以上の非常に多くの人に影響します。しかも花粉症のように季節限定ではありません。一年中です。

 そこで人口や期間を単純化して考えると、私は、老眼による経済損失が80兆円規模に達している可能性もあるのではないか、と考えています。

――80兆円?

伊勢屋 もちろん、これは私なりの大まかな試算です。ただ、日本の年間税収にも匹敵するような規模です。

 それくらい、目の問題を「個人が我慢すればいい」と片づけるのはもったいないということです。

中高年がリスキリングできない理由は「目」かもしれない

――具体的に、仕事にどんな影響があるのでしょう。

伊勢屋 今はAIが急速に発達して、ビジネスパーソンにリスキリングが求められていますよね。

 ところが中高年になると、

「新しいことを勉強するのが面倒になった」
「もう若い人みたいには覚えられない」

 と思ってしまう人がいます。

 でも、その一部は本当に能力の問題でしょうか。

 細かい文字を読むとすぐ疲れる。パソコンを見続けると頭が重くなる。夕方には集中力が残っていない。

 そんな状態で、新しい知識を学ぶのが楽しいはずはありません。

 逆に、見え方が快適になって脳の負担が減れば、中高年でも新しいことに挑戦しやすくなる可能性があります。

「自分はもうトシだ」が消費まで止めている?

伊勢屋 もう一つ、私は消費への影響も大きいと考えています。

 高齢者世帯は、日本の消費を支える大きな存在です。

 ところが年齢を重ねると、消費額は減っていく傾向があります。

――それは普通に、年を取って活動量が減るからでは?

伊勢屋 もちろん、ライフスタイルの変化はいろいろあります。

 でも、全部が「年齢そのもの」のせいでしょうか。

 メールを書くにも時間がかかる。スマホを見るのが面倒になる。夕方になると疲れて何もしたくない。以前は好きだった趣味もやらなくなる。

 そんなことが続くと、

「自分はもう年だから」

 と思うようになります。

 私はこれを「セルフイメージの老化」と考えています。

高齢者の消費が5%増えれば、約6兆円

伊勢屋 原稿で使った数字では、高齢者世帯の年間消費は約115兆円です。

 もし、正しい目の対策によって活動的な人が増え、消費が全体で5%増えたとすれば、単純計算で年間6兆円近い規模になります。

――目の話から、GDPの話になってきました。

伊勢屋 壮大でしょう(笑)。

 でも私は本気なんです。

 目がよく見えれば、本を読む。旅行へ行く。買い物をする。新しい道具を使う。働き続ける。新しいことを学ぶ。

 全部、行動です。

 老眼対策というと、「小さな字が見えるようになる」という個人レベルの話になりがちですが、40代以上の何千万人もの行動が少し変われば、その影響は社会全体に広がります。

「老眼攻略で日本を再生する」

 大げさに聞こえるかもしれませんが、私はそれくらいの可能性があると思っています。