白内障と診断されたら、多くの人は「目もずいぶん老化した」と落ち込むでしょう。しかし老眼対策の専門家・伊勢屋貴史さんは、手術が必要になったときを「人生の大きな転機」と捉えています。人工の眼内レンズによって、近くから遠くまで見える状態を目指せるからです。その選択肢を聞きました。
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70代には「一発逆転」のチャンスがある?
――老眼になったら、これからずっと眼鏡やコンタクトと付き合っていかなければいけないんでしょうか。
伊勢屋貴史(以下、伊勢屋) 実は、年齢を重ねると一発逆転のようなチャンスが訪れる可能性があります。
――発逆転?
伊勢屋 白内障の手術です。
年齢を重ねると、目の中の水晶体は硬くなるだけでなく、少しずつ濁ってきます。それが進むと、視界がかすむ、まぶしく感じる、視力が落ちるといった白内障の症状が出てきます。
白内障の手術では、その水晶体を取り除いて、人工の「眼内レンズ」に置き換えます。
――古くなったレンズを、新しいレンズに入れ替えるわけですね。
伊勢屋 そうです。そして今は、眼内レンズにもいろいろな選択肢があります。
左右の目で「近く」と「遠く」を分担する
――保険診療でも、老眼対策はできるのでしょうか。
伊勢屋 選択肢の一つとして「モノビジョン」という考え方があります。
たとえば右目を遠くが見えやすい状態、左目を近くが見えやすい状態にする。左右で役割を分けるんです。
――そんなことをしたら、変な見え方になりませんか。
伊勢屋 脳はとても優秀で、慣れると左右から入ってくる情報をうまく使い分けてくれます。遠くを見るときは遠くが得意な目、近くを見るときは近くが得意な目からの情報を多く使うようなイメージです。
ただし、モノビジョンがすべての人に合うわけではありません。奥行き感や立体感をつかみにくいと感じる人もいます。
だから、いきなり手術でモノビジョンにするのではなく、興味があるなら早い段階でコンタクトレンズなどを使って、その状態が自分に合うのか試してみるという方法もあります。
「遠く・中間・近く」に焦点を合わせるレンズもある
――もっと自然に、近くから遠くまで見えるレンズもありますか。
伊勢屋 あります。遠近に対応した多焦点の眼内レンズです。
選定療養という制度を利用して、手術は保険診療で受け、レンズについて追加費用を負担する方法もあります。
さらに自由診療では、より細かく焦点を設定したレンズもあります。
――選択肢がずいぶん多いんですね。
伊勢屋 そうなんです。だから「白内障手術=ただ濁った水晶体を治療するもの」とだけ考えるのではなく、その後、自分がどんな見え方で暮らしたいのかまで考えることが重要です。
75歳からでも、まだ十数年ある
――でも、70代になってからよく見えるようになっても、ちょっと遅い気もします。
伊勢屋 そんなことはありません。
2024年の簡易生命表で見ると、75歳の平均余命は男性で約12年、女性で約16年あります。
12年って、小学校に入学してから高校を卒業するまでですよ。
16年なら大学卒業までです。
――そう言われると、とても長いですね。
伊勢屋 でしょう? 75歳で「新しい目」を手に入れたとして、その先にそれだけの時間がある。
本も読める。旅行もできる。趣味だって楽しめる。新しいことを始めたっていい。
白内障と聞けば、普通は「また一つ老化した」と感じるでしょう。
でも、私は違う見方もできると思っています。
「ここから先の人生を、どんな見え方で生きようか」
そう考えるタイミングでもあるんです。
※⑧原稿中の保険制度、自己負担額、レンズの種類・費用は変動するため、掲載時に2026年時点の最新情報を再確認したほうが安全です。






