老後に人生を振り返るとき、最も後悔することは何か? もっと挑戦しておけばよかった。冒険すればよかった。いろいろ頭をよぎるかもしれない。
本記事では、山口周氏が「決して寝る前に読み始めないこと。一度ページをめくってしまうと止めるのは不可能です。」と絶賛している話題書『極限の漂流118日間』をもとに、「冒険に出なくても冒険者に一歩近づく方法」についてライター小川晶子氏が寄稿する。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
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冒険者に憧れるけれど
人類の中には、根っからの旅人あるいは冒険者とでもいう人がいるのだろう。
だからこそ地球上に広がり、さらには宇宙まで探索し、文明を発展させてきたのに違いない。
どんなに危険でも、まだ知らぬ場所へ行ってみたい、チャレンジしてみたいという気持ちが、本能のようにしみついている。
冒険者には憧れるものの、そうなれない私は、冒険者たちの一つひとつの言動に驚嘆してしまう。
「根っからの漂流者」たちの漂流記
イギリス人夫婦が太平洋で遭難し、118日間にも渡って漂流したというサバイバル・ノンフィクション『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)を読んで、彼らが超・旅人気質であることに驚いた。
「根っからの漂流者」と言ってもいいかもしれない。
モーリスとマラリンの夫婦は、結婚して家を買ったが、すぐにその家を売ってしまう。船を買うためだ。
家ではなく、船で暮らすのだという。
私のような凡人からするとこの時点ですでにすごい。
もちろん、漂流は事故だ。
太平洋を航海中、クジラとの衝突で船に穴が開いたために、救命ラフトとボートで脱出せざるをえなかった。
見渡す限りの海の上で、わずかな食料と飲み水で生き延びるふたりの物語は壮絶である。読んでいるこちらも、何度も絶望しそうになる。
「早く地面のある場所に行きたい。家に帰って安心したい……!」と思ってしまう。
救助された瞬間に思ったこと
衰弱し、ギリギリの状態で救助されたとき、夫モーリスは「何かが終わってしまったという、いわく言いがたい感慨」を抱いたという。
そして、救助してくれた大勢の船員が周囲にいることを一瞬忘れたふたりは驚きの会話をする。
「今度はオーラリン二世号とパタゴニアよ!」とマラリン。明日にも出発しそうな勢いだった。
――『極限の漂流118日間』より
本当にギリギリの状態だからこそ、あえてそう言ったのだろうか。なんとか正気を保つためには次の旅のことを考えざるをえなかった……?
いや、ふたりは本気だ。また船を手に入れ、旅に出るのだ。
生還に対する複雑な心理
極地探検家の角幡唯介さんは、本書の解説にこう書いている。
生還と同時に自分だけに帰属していた圧倒的に手応えのある世界は永久に失われる。
でも、もしかしたらそれを取り戻すために私たちはまた旅に出るのではないか?
――『極限の漂流118日間』より
確かに、極限状況で生き延びるふたりの体験は、なんとも言えない魅力にあふれていた。生と死、愛、希望など最も重要なことがぎゅっと濃縮されて詰め込まれているようだった。
本書を読むと、漂流者の内的体験と複雑な心理を味わうことができる。
たくさん驚きつつ、冒険者の解像度が上がる気がする。そして少し自分も冒険者に近づいた気持ちになれるのだ。








