辛いことがあっても心が折れない人と、ポキンと折れてしまう人。その差は一体どこにあるのか?
ある日突然、会社を辞め、家を売り、無線機も持たずに航海に出た夫婦。自作した船で出港したが、ガラパゴス沖で突如クジラに襲撃され海に投げ出された。118日間、生死をさまよう最上級のスリルと人生模様を堪能できる全米ベストセラー『極限の漂流118日間』をもとに、「苦しくても心が折れない人の共通点」についてライター照宮遼子氏がレポートする。(構成/ダイヤモンド社・寺田庸二)
Photo: Adobe Stock
まだない未来を細部まで思い描く私
彼氏がいるわけでもないのに、結婚したらどんな暮らしをしたいかを考えてしまうことがある。現実には、何の予定もない。そんなことを考えても、今すぐ何かが変わるわけではない。
むしろ、「そんなことを考える前に、目の前の生活をちゃんとしろ」と自分で突っ込みたくなる。洗濯物は残っているし、仕事の連絡も返さなければならない。今やるべきことはいくらでもある。
それでも、住みたい街や部屋の間取りを考え始めると止まらなくなる。家具の置き場所まで考えたところで、ふと我に返る。
苦しくても心が折れない人の特徴
アドレナリン全開の航海アドベンチャーとラブストーリーが融合したとてつもない実話『極限の漂流118日間』(ソフィー・エルムハースト著/村井章子訳)には、妻のマラリンが次の船を思い描く場面がある。
そう、独房で自分の家を空想していたアメリカ兵のように。
「スマートな二本マストの白いヨット。優美で、しかも勇敢な船」。
マラリンには、自分がその船の中を見て回る様子まで克明に思い描くことができた。
――『極限の漂流118日間』より
マラリンは船内のレイアウトや食料の置き場所を考え、長い航海に必要な食料リストやメニューまで書き出していく。
助かる保証はまだない。
それでもマラリンは、もう一度海で暮らす日のことを細かく考えていた。
漂流中なら、救助のことで頭がいっぱいになってもおかしくない。
けれど、まだ見ぬ暮らしを思い描くことで、目の前の現実だけに気持ちを閉じ込めずにすむことがある。
役に立たない想像も肯定してくれる
想像したことが、そのまま現実になるわけではないし、問題が消えるわけでもない。
それでも、役に立つかどうかだけで切り捨てると、人が苦しい時間をどうやり過ごしているのかが見えにくくなる。
追い詰められたときに必要なのは、合理的な行動だけとは限らないのだ。
本書は、極限のサバイバルを描いた漂流記でありながら、追い詰められた人間の内側まで丁寧に描かれている。
すぐには形にならない想像の中にも、苦しい時間をやり過ごすために必要なものがあると教えてくれる一冊でもある。








