会議で多数派に賛成したり、SNSで周囲に合わせた行動をとってしまったりと、私たちは日々無意識に「その場の空気」へ同調している。周囲に合わせる行動は個人の意思にとどまらず、組織の不正や社会全体の意思決定にまで大きな影響を及ぼす。リーダーが不在でも統率が取れるムクドリの大群と人間の共通点とは何なのか。サルの脳研究から浮き彫りになった現象と、人間の脳内に備わる驚くべき仕組みを『すべて本能のせい』から紐解く。(ダイヤモンド社書籍編集局)
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日常や組織を支配する「同調圧力」と集団の心理
私たちは、周りの意見や行動に無意識に合わせてしまう傾向を持っています。
身近なところでは、会議で違和感があっても多数派に賛成してしまったり、買い物で周りに合わせて本当は要らないものを選んでしまったりします。
SNSでなんとなく周りに合わせた投稿をしてしまうのもそうです。
心の中では違う考えを持っていても、その場の空気や周りの反応を優先して自分の行動を変えてしまうのです。
これが社会全体になると、会社などの組織で不正やおかしいルールが誰にも止められずに続いてしまう「集団思考」の原因にもなります。
また、世論が一気に一つの方向に傾き、少しでも違う意見が排除されてしまうこともその一つです。
いわゆる「空気」によって意思決定が支配され、一人ひとりの冷静な判断が抑えこまれてしまう状況です。
リーダー不在で動く「鳥の群れ」と人間の共通点
これは人間だけの現象ではありません。
ムクドリの大群が空を舞う光景を見たことがある人も多いと思います。
数千羽が一瞬にして方向を変え、まるで一つの生き物のように動きます。
研究者が調査してみると、群れ全体を統率するリーダーがいなくてもまとまって動いていることがわかりました。
周囲の数羽の動きに反応するという単純なルールだけで、巨大な群れ全体がまとまって動けていたのです。
一羽が動くと隣の鳥が、わずか数分の一秒で反応し、その情報が波のように群れ全体へ伝わっていく。
私たちの同調も、ある意味ではこれに似ています。
人間の場合はもちろん鳥ほど単純ではありませんが、周囲の行動を手がかりに自分の行動を決め、その影響がさらに他者へ伝わっていくという点で共通しています。
他人の行動を見るだけで反応する脳のメカニズム
「真似をする」という行動の背景には、脳レベルの仕組みがあります。
1990年代、イタリアのパルマ大学でサルの脳を研究していたグループが、サルの脳に電極を取り付けて神経細胞の活動を記録していたときに、たまたま面白い発見をしました。
研究者が物をつかむ動作をするのを見ていただけなのに、サル自身が物をつかんだときに反応する神経細胞が反応したのです。
自分は何もしていないのに、他人の行動を見ているだけで、脳内でその動きをシミュレーションしていた。
この細胞は後に「ミラーニューロン」と名付けられました。
もちろん、人間の同調や模倣がすべてミラーニューロンだけで説明できるわけではありません。
人間の脳でミラーニューロンを直接確認することはまだ難しく、脳の働きを画像で分析するfMRIなどの研究から似た仕組みの存在が示唆されている段階です。
私たちが周囲の行動に影響を受けたり、成功している人のやり方を参考にしたくなったりする背景には、報酬系や社会的学習など複数の仕組みが関わっています。



