遺伝物質を持たず、自ら動くこともできないただのタンパク質でありながら、動物の体内に侵入して脳組織を破壊する病原体「プリオン」。プリオンが脳を蝕む仕組みから、対極的な性質を持ち植物のみに感染する最小の病原体「ウイロイド」の性質まで、『アメリカの中学生が学んでいる 14歳からの生物学』から解説する。(ダイヤモンド編集局)
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遺伝物質を持たない「プリオン」の感染ルート
プリオンはタンパク質の一種で、遺伝物質は持っていない。
そのためウイルスと同じく、生物とはみなされない。
また、自ら動くこともできない。
宿主を見つけるには、植物など、感染対象でない生物に付着する。
そしてその生物を食べたほかの生物が、プリオンに感染する。
知られている限り、プリオンに感染するのは動物だけである。
プリオンは草の中にあるが、草ではなく動物に感染する。
タンパク質を「折りたたみ直す」驚異の増殖メカニズム
プリオンは、宿主のタンパク質の働きを妨げることで害をおよぼす。
タンパク質の形を変えてしまうのだ。
タンパク質は、正しい形に折りたたまれていないと適切に働かない。
プリオンは、そばにあるタンパク質をいったんほどいて、折りたたみ直すことができる。
しかし折りたたみ直されるときに、そのタンパク質はプリオンと同じ形になってしまい、新たなプリオンが作られる。
このタンパク質折りたたみのプロセスによって、正常だったタンパク質が正しく機能しなくなり、細胞がダメージを受ける。
また、この折りたたみによってプリオンは増殖する(もととまったく同じ新たなプリオンが作られる)。
プリオンは通常、感染した動物の脳の中にあるタンパク質に影響を与え、脳の組織を破壊する。
植物のみに感染する最小の病原体「ウイロイド」
ウイロイドはウイルスよりもさらに小さい。
知られている中で最小の病原体で、タンパク質のコートにくるまれてはいない。
振る舞い方はプリオンと正反対である。
ウイロイドは1本のRNA分子でできていて、タンパク質は持っていない。
植物のみに感染して病気を引き起こす。
宿主をだます
ウイロイドはRNAポリメラーゼという酵素を利用して増殖する。
この酵素はすべての宿主細胞の中に存在し、DNAを読み取って新たなRNAを作る役割を担っている。
ところがウイロイドのRNA分子は、宿主のRNAポリメラーゼをだまして、DNA分子であるかのように思い込ませる。
するとRNAポリメラーゼは、そのウイロイドのRNA分子をコピーしてしまう。
この点がRNAウイルスとは違う。
RNAウイルスは別の酵素を使ってRNAをDNAに変換する。
ウイロイドは、農耕作業、種子、汚染した用具などを介して伝染する。
ウイロイドは1971年にアメリカ人病理学者のセオドール・O・ディーナーによって発見された。



