仲のいい人とは、「アレ」で通じる。ところが、初対面の人に「アレ」と言っても、「何のこと?」と聞き返されます。実は、この「コレ・ソレ・アレ」こそ、人との距離感の正体を考える大きなヒントなのです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

人との距離感をグッと近づけまくる、たった1つのコツとは?

「アレ」で通じる人は、なぜ仲がいい?

 人との「心の距離」は、目には見えません。

 でも、それを簡単に測る方法があります。

一体なにが距離感をつくり出しているのでしょうか?
それは、「コレ」「ソレ」「アレ」です。
「コレ」「ソレ」「アレ」と言って、どれくらい相手に通じるか。
その多さや度合いによって、距離感が変わります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たとえば、家族との会話です。

「アレ、買ってきてくれた?」
「買ってきたよ」

 これだけで成立することがあります。
 何を買うのか説明していないのに、通じてしまう。

 一方、初対面の人には絶対に通じません。
「アレって何ですか?」となるでしょう。

「コレ」と言って、「ああコレね」と応じてくれる人は距離感が近い。
「なにそれ?」と聞き返されるなら、その人との距離は遠いということです。

――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 つまり、距離が近いとは、単に「何度も会っている」ということではありません。

 2人のあいだに「説明しなくても共有できるもの」がたくさんある状態なのです。

「アレ」が増えるほど距離は縮まる

 これは昔からの友人を思い浮かべると、よくわかります。

会話の途中に、単語をど忘れしてしまったとき、「アレだよ、アレ!」と言う。仲の良い相手なら、ちょっとしたヒントで「あー、アレな、わかるよ」と応じてくれます。
同窓会で久しぶりに会った同級生も、最初はちょっと距離感がありますが、「あの先生」や「あの事件」を思い出していくと、徐々に距離感が近づいていきます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 久しぶりに会った同級生とは、最初は少しぎこちない。
 ところが、

「あの先生、覚えてる?」
「あの修学旅行のときさ……」

 と話しているうちに、一気に昔の関係に戻っていくことがあります。

「あった、あった!」
「あれヤバかったよな」

 と、どんどん「アレ」で話せるようになる。

 これは、2人が過去に共有していたものを、もう一度確認しているからです。

距離を縮めたければ「共通のもの」を増やす

 だとすれば、人との距離を縮める方法も見えてきます。

 無理に面白い話をする必要はありません。

「コミュ力」を発揮して、相手を笑わせる必要もない。

 2人のあいだに「コレ」「ソレ」「アレ」を増やせばいいのです。

 一緒に同じものを見る。
 同じ場所に行く。
 同じ仕事をする。
 同じ出来事について話す。
「あのお店」「この企画」「さっきの話」と、2人だけで指し示せるものが少しずつ増えていく。

 すると、説明しなくても通じることが増えます。

「あの件、どうする?」
「アレですよね」
「そう、それ」

 こんな会話ができるようになれば、距離はすでに縮まっています。

 人との距離を近づけるコツは、無理に自分をさらけ出すことでも、会話術を磨くことでもありません。

 相手と一緒に「同じもの」を見て、2人にとっての「アレ」を増やしていく。

「アレ」で通じるものが増えるほど、人は自然と「近い人」になっていくのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。