「あの人はコミュ力が高い」「自分はコミュ力が低い」。当たり前のように使われる言葉ですが、本当にそんな「能力」があるのでしょうか。友人とは朝まで話せるのに、仕事では何も話せない。その事実を考えると、「コミュ力」という言葉の奇妙さが見えてきます。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「口下手な人」は、本当にいつでも口下手なのか?
私は口下手です。
そう言うと、「人と話すのが苦手な人なんだな」と思われるでしょう。
でも、少し過去を振り返ってみると、どうも話がおかしいのです。
ただ、大学生の頃はちがいました。
友人と朝まで話し込んだことも、何度もありました。
その頃の自分は、「話すのが苦手だ」と感じることがほとんどありませんでした。
そもそも、そんなことを考えたり悩んだりする必要がなかったのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
朝まで話せる人を、「口下手」と呼ぶでしょうか。
おそらく、あまり呼ばないでしょう。
気心の知れた友人が相手なら、話題はいくらでも出てくる。
くだらない話で笑ったり、真面目な話をしたり気づけば何時間も経っている。
ところが、社会に出た途端に状況が変わります。
仕事になった瞬間、何も話せなくなった
うまく話せない自分を徐々に自覚するようになっていきました。
まず、就職活動。
面接でもグループディスカッションでもうまく話せません。
その後なんとか就職したあとも、上司やクライアントの質問にうまく答えられません。
何度かクライアントの会食にも参加しましたが、ほとんど黙っているだけでした。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
同じ人間です。
大学時代の友人とは朝まで話せる。
でも、面接官を前にすると話せない。上司にも話せない。クライアントとの会食でも黙ってしまう。
もし「コミュ力」が、その人の中にある単純な能力だとすれば、少し不思議です。
足が速い人は、相手が友人でも上司でも、基本的には足が速い。
計算が速い人も、相手によって急に計算できなくなるわけではありません。
ところがコミュニケーションは、そうではない。
「誰と話すか」によって、できたりできなかったりするのです。
「コミュ力が低い」で片づけると見えなくなる
ここに、「コミュ力」という言葉への違和感があります。
「自分はコミュ力が低い」
そうやってラベルを貼ってしまうと、問題がすべて自分の能力にあるように思えてしまいます。
でも実際には、友人とは話せる。初対面だと話せない。好きなことなら話せる。仕事の話になると緊張する。大人数では黙るけれど、2人なら話せる。
というように、条件によってコミュニケーションのあり方は変わります。
だったら、「コミュ力がある・ない」の一言でまとめてしまうのは、かなり乱暴ではないでしょうか。
コミュニケーションは「相手との間」にある
「自分が口下手だ」という問題には向き合わなかったのです。
スキルを素直に身につけるのではなく、
「いや、そもそもこれはスキルの問題なのだろうか?」と、疑うことを選んだのです。
コミュニケーションから逃げた、とも言えるかもしれません。
そんなわけで、私はコミュニケーションについて考えることを選びました。
考えた結果、ひとつ気づいたことがあります。
それは、「コミュニケーションのあり方が、相手によって変わる」ということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
コミュニケーションは、自分ひとりでは成立しません。
必ず相手がいます。
相手との関係性が変われば、話せる内容も、緊張の度合いも、使う言葉も変わります。
親友との雑談と、採用面接。
家族との夕食と、取引先との会食。
同じ「話す」という行為でも、まったく別物です。
だから、会話がうまくいかなかったときに、すぐ「自分はコミュ力が低い」と結論づけなくていい。
考えるべきなのは、もっと具体的なことです。
「私は、誰と、どんな状況になると話せなくなるのか?」
そこまで分けて考えてはじめて、本当の問題が見えてきます。
「コミュ力」という便利な一言で自分を評価するのではなく、自分と相手との「間」で何が起きているのかを見る。
コミュニケーションを考えるなら、そこから始めたほうがいいのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




