「相手によって態度を変える人」は、なんとなく信用できない。そう思われがちです。でも、本当に誰に対しても同じ態度でいることなど可能なのでしょうか。むしろ私たちは、相手との「距離」に合わせて態度を変えるのが自然なのです。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「誰とでも同じ態度で話しましょう」が無理ゲーすぎるワケとは?

人は相手によって「別人」になる

 職場では無口なのに、友人の前ではめちゃくちゃしゃべる。

 後輩には強気なのに、恋人の前では急におとなしくなる。

 そんな人を見ると、「裏表があるな」と思ってしまうかもしれません。

後輩には偉そうな態度の先輩が、彼女にはヘコヘコしているのを見たことがあります。「変わりすぎだろ!」
とツッコミたくなりますが、これは自然な態度とも言えるのです。
他人がやっているとびっくりするのですが、実際にみなさんも、相手によって話す内容や話し方を変えているはずです。
会社ではおとなしく、退勤時間を待ちわびて黙々と仕事する人でも、趣味が一緒の友だちとの飲み会では大声で場を仕切っていたり、親には当たりが強くなったりします。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 考えてみれば当然です。

 上司と話すとき、親と話すとき、恋人と話すとき。

 同じテンション、同じ言葉遣い、同じ話題で接する人はほとんどいません。

 私たちは無意識に、相手との距離を測りながら「自分」を変えているのです。

人は心の中で「頭身」を変えている

 この変化を、とてもわかりやすく表現した漫画があります。

漫画家はこのような態度のちがいを「頭身」であらわすことがあります。
鳥山明の漫画『Dr.スランプ』では、場面に応じて頭身を変えるキャラクターの則巻千兵衛博士が出てきます。
千兵衛博士は、ふだんは三頭身です。
しかし、好きな女性が現れると急に五頭身に切り替わり、カッコつけはじめます。
ただ、五頭身はとても疲れます。
だから長時間キープすることができず、気を抜くとすぐに三頭身に戻ってしまいます。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは、現実の私たちにも起きています。

 気心の知れた友人の前では「三頭身」。
 初対面の取引先では、ちょっと背伸びして「五頭身」。

 偉い人との会食なら、さらに緊張して「六頭身」になっているかもしれません。
 そして当然、「五頭身」や「六頭身」でいるのは疲れます。

 親しい友人と2時間話すのは平気なのに、初対面の人との会食は1時間でもぐったりする。

 それは、「話すこと」そのものより、いつもと違う頭身を保ち続けているからとも考えられます。

なのに「誰とでも話せ」と言われる

実際のコミュニケーションでも、距離感は目に見えない形であらわれています。
みんな、心の中では「頭身」を自在に変えているものです。
そして、距離感に応じてみんな態度を変えているはずなのです。
ところが、仕事になると状況が変わってきます。
「誰とでも分けへだてなく話すのがふつう」
「誰にでも伝わるように話すのがふつう」
という考え方が常識になっていく。
就職活動では、初対面同士でグループディスカッションを行なうことがあります。
ビジネスでは、「話しやすい人とだけ話す」という甘えた態度は許されないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 ここに、コミュニケーションの難しさがあります。

 プライベートなら、「この人とは話しにくいな」と思えば距離を取れます。

 でも、仕事ではそうはいきません。
 初対面の人とも話す。苦手な上司にも報告する。ほとんど関係性ができていない取引先にも、自分の考えを伝える。

 つまり仕事では、距離が遠いままでもコミュニケーションすることを求められるのです。

「誰とでも同じ態度」なんて目指さなくていい

 だから、「誰とでも同じように話せない」と悩む必要はありません。

 そもそも、人間は相手との距離によって「頭身」を変える生き物です。

 問題は、態度を変えることではありません。

「いま自分は、この人にどれくらい距離を感じているのか」を把握することです。

 親友と取引先に同じ態度で接する必要なんてない。
 誰とでも同じ自分でいようとするのではなく、相手との距離に合わせて自分の「頭身」を変える。

 それができることもまた、コミュニケーション能力のひとつなのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない――絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。