同じ職場なのに、なぜか話しやすい人と、妙に話しにくい人がいる。相手の年齢や立場が同じでも、この違いは生まれます。では、「話しやすさ」の正体とは何なのでしょうか。カギになるのは、相手との「距離感」です。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

相手が変われば「話しやすさ」も変わる
子どもの頃は、話す相手の多くが家族や同級生です。
ところが、成長するにつれて人間関係は複雑になります。
同級生だけでなく、先輩や後輩と話すようになる。先生とも話さなければいけない。
就職したら取引先の人とも話します。
そして、その都度、スラスラ話せるときと話せないときがある。
コミュニケーションの悩みなんて感じないときがある一方で、「自分がいかに話せないか、聞けないか」を痛感する場面もあります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
不思議なのは、自分の「話す能力」は同じはずなのに、相手によってまったく違う自分になることです。
親しい友人とは何時間でも話せるのに、初対面の人を前にすると言葉が出ない。
気の合う同僚には相談できるのに、別の同僚には「こんなことを聞いていいのかな」と身構えてしまう。
つまり、話しやすさは「自分のコミュ力」だけでは決まりません。
「自分と相手の関係」によって変わるものなのです。
「話しにくい」と、人は話すこと自体をやめる
ここで重要なのが、「話しやすさ」です。
同じ年齢の同級生でも同じです。全員が話しやすいわけではありません。
「話しやすさ」は、コミュニケーションを考えるとき、一番はじめにぶつかる難問です。
何を伝えるにしても、話しやすくなければ「話さない」を選択できてしまうからです。
私がコミュニケーションから逃げたように、どれだけ「わかりやすさ」や「伝わりやすさ」を追求しても、話さなければ意味がないのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
これは仕事でも大きな問題になります。
「こんな初歩的なことを聞いたら怒られるかな」
「反対意見を言ったら面倒なことになりそうだ」
そう思えば、人は黙ります。
どれだけ「わかりやすく伝える技術」を身につけても、その前段階で「話さない」を選んでしまえば使いようがありません。
コミュニケーションで最初に必要なのは、上手に話すことよりも、そもそも「話してもいい」と思えることなのです。
「話しやすさ」の正体は距離感
では、「話してもいい」と感じさせるものは何なのでしょうか。
私は、「相手との距離感」こそが、話しやすさをつくり出していると考えています。
距離感とは、相手とどれくらい離れているかの感じ。
「心の距離感(心理的な距離感)」と、「本当の距離感(物理的な距離感)」の2つがあります。
私たちは誰かと話をするとき、心や体で相手との距離を測っています。
心の距離が近い人は話がしやすくて、言葉が気軽に出てくる。
心の距離が遠い人は会話が止まりやすく、気まずい沈黙になる。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
たとえば、親しい友人なら、「これ聞いたら変かな?」といちいち考えません。
思いついたことを、そのまま口にできる。
でも、心理的な距離が遠い人には、一言発するだけでも、
「失礼じゃないかな」
「つまらないと思われないかな」
「間違っていたらどうしよう」
と考えてしまいます。
その「ワンクッション」が、言葉を出にくくするのです。
話し上手になる前に「距離」を見る
だから、「あの人とはなぜか話せない」と感じたとき、自分のコミュ力を責める必要はありません。
「なぜ、この人とは距離を感じるんだろう?」と考えてみる。
まだ会った回数が少ないのか。立場の違いを意識しているのか。相手のことをよく知らないのか。
そこに「話しにくさ」の理由が隠れているかもしれません。
「話しやすい人」と「話しにくい人」を分けているのは、話術ではなく「相手との距離感」なのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




