「本人が大丈夫と言っているんだから、大丈夫なんだろう」。そうやって、相手の言葉だけを信じていないでしょうか。しかし、人間は言葉だけでコミュニケーションしているわけではありません。じゃあ、頭のいい人はどう捉えているのか。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

頭の悪い人は「世の中は言葉がすべて」と思い込んでいる。じゃあ、頭のいい人はどう捉えている?

その言葉を信じていいのか?

 職場で、同僚にこう言われたとします。

「大丈夫です」

 言葉だけを受け取れば、「大丈夫なんだな」と理解するでしょう。

 でも、こんな状況だったらどうでしょうか。

たとえば、会社に行ったら隣の席の同僚の顔が青ざめていて、汗だくで息もとぎれとぎれだったとします。
そこで「大丈夫?」と尋ねてみたところ、同僚は「大丈夫」と答えてきた。
言葉だけのコミュニケーションでは、表情や汗だくであることは伝わりません。
もし言葉だけでコミュニケーションをしていたら、「大丈夫なんだね」で終わってしまいます。相手が「大丈夫」と言っていたから、その言葉を信じて、「大丈夫なんだ」と納得してしまうわけです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

「大丈夫」という言葉と、目の前にいる本人の状態が明らかに食い違っています。

 それでも「大丈夫と言ったから大丈夫」と判断する。

 これは、言葉を信用しすぎている状態です。

言葉より「目の前の現実」を見る

 実際にこの場面に遭遇したら、多くの人は違う反応をするでしょう。

でも、具合の悪い様子を見てしまったらどうでしょうか?
いくら同僚が、「大丈夫です」と言っていたとしても、「いや、大丈夫じゃないでしょ!」と言うのではないでしょうか。
それから、医務室に行くことや、早退することをすすめることができます。
こういう対応ができるのは、「実際に会っている」からです。
言葉で説明しなくても、いろいろと伝わってくるものがあるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 私たちは、言葉だけを受け取っているわけではありません。

 顔色を見る。声の調子を聞く。汗を見る。呼吸を見る。動きを見る。
 そうした「言葉になっていない情報」を大量に受け取ったうえで、相手の状態を判断しています。

 だから、「大丈夫」という言葉より、「どう見ても大丈夫じゃない」という現実を優先できるのです。

「言語化されていないもの」は存在する

 これは体調の話だけではありません。

「怒ってないよ」と言いながら、明らかに不機嫌そうな人。
「この企画、いいと思います」と言いながら、まったく乗り気ではなさそうな人。
「わかりました」と言いながら、困った顔をしている部下。

 言葉と現実がズレる場面はいくらでもあります。
 そんなとき、「本人がそう言ったから」で終わってしまえば、大切な情報を見落とします。

 言葉は、現実のすべてを表現しているわけではないのです。

頭のいい人は「言葉の外側」も見ている

「言語化」が重視される時代になるほど、私たちは「言葉にされたもの」に注目します。

 でも、世の中には言葉になっていない情報が山ほどあります。
 表情、動き、空気、モノ、場所、状況。
 それらもまた、私たちに何かを伝えています。

 だから頭のいい人は、相手の発言だけで判断しません。

「この人は何と言っているか」と同時に、「実際には何が起きているか」を見る。

 言葉を無視するのではありません。
 言葉も、目の前の現実を理解するための情報のひとつにすぎない。

 そう捉えることができれば、言葉だけに振り回されず、相手や状況をもっと正確に理解できるようになるのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。