説明が長ければ、相手にちゃんと伝わる。そう考えていないでしょうか。しかし、いくら丁寧に説明しても、相手が「ふーん」で終わってしまうことがあります。頭のいい人は、説明を始める前に「相手と何を共有できているか」を確認します。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

頭の悪い人は説明が長すぎる。じゃあ、頭のいい人は何に気をつける?

「アレ」で通じるなら説明はいらない

 仲のいい人との会話は、驚くほど短いものです。

「コレ」や「アレ」で伝われば、コミュニケーションは簡単になります。
「それを見て思ったり考えたりしたこと」をいきなり話すことができるからです。
単に「あれ面白かった」と言うだけで伝わります。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 たとえば、同じ映画を見た友人なら、

「あのラスト、ヤバかったね」

 だけで会話が始まります。

 映画のタイトルも、登場人物も、ストーリーも説明する必要がありません。
 すでにお互いが「あの映画」を知っているからです。

 つまり、コミュニケーションがラクなのは、説明がうまいからではありません。
 説明しなくてもいいことが多いからなのです。

説明が長いほど「伝わる」とは限らない

 逆に、相手がその映画を知らなかったらどうでしょう。

でも、相手がそれを知らなかったら、どういう内容かを伝えないといけません。
「あれというのは、こういうことで……」と長々と内容を説明して、結果、次のような会話が繰り広げられます。
「で、それがどうしたの?」
「え、面白かった」
「ふーん(よくわからないけど)」
「うん(がんばって話したんだけどな……)」
2人の距離感は縮まらないまま、会話は途切れてしまいます。
切ないです。
距離感の遠い相手には、自分の思っていることを伝えるまでに時間がかかるのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 これは仕事でも起こります。

 自分は前提から丁寧に説明している。
 資料も用意した。言葉も尽くした。
 なのに、相手の反応は「なるほど……」だけ。

 そこで、「もっと詳しく説明しよう」と考えると、さらに話が長くなる。
 でも、本当の問題は説明量ではないのかもしれません。

頭のいい人は「共通理解」を確認する

いま、多くの人が言語化スキルを身につけようとしています。
でも、「相手との距離感によって伝える難しさが変わる」ということはあまり語られていないような気がします。
たとえ語彙力を身につけて、自分の考えを正確に言葉にできたと思えても、「コレ」や「アレ」を共有していなければ、相手からの反応は、「ふーん(知らんけど)」になってしまうのです。
「コレ」や「アレ」で通じることとは、一言で言うなら「共通理解」です。
共通理解がどれだけあるかによって、人との距離感は変わります。
そして、伝えるときの難易度も変わる、ということです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より

 説明するときに考えるべきなのは、「自分が何を話すか」だけではありません。
「相手はどこまで知っているのか」です。

 相手も知っているなら説明しない。
 知らないなら、必要なところだけ補う。
 専門家には専門用語を使っていいけれど、初心者には具体例から入る。
 つまり、説明の長さは最初から決められるものではありません。

 相手との「共通理解」の量によって変わるのです。

「どこから話すか」を見極めよう

 頭の悪い人の説明が長くなりやすいのは、相手を見ずに「最初から全部」を話してしまうからです。
 一方、頭のいい人は、まず相手との共通理解を探します。

「ここまでは知っていますよね?」
「前に話したアレです」
「このニュース、見ました?」

 そうやって、どこからなら「アレ」で通じるのかを探す。
 そこが見つかれば、説明は一気に短くなります。

 頭のいい人は、説明を短くするのがうまいのではありません。
 相手が知っていることを、わざわざ説明しないのです。

「何を話すか」を考える前に、「どこまで説明しなくていいか」を考える。

 それだけで、説明は短く、そして伝わりやすくなるのです。

ヤギワタル
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。