「もっと積極的にコミュニケーションを取ろう」。職場ではよく聞く言葉です。でも、話しかけない人に「もっと話せ」と言うだけで、本当に会話は増えるのでしょうか。頭のいい人は、本人のやる気ではなく「距離」に目を向けます。本記事では、書籍『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』の中からビジネスパーソンにも役立つノウハウとして紹介する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

人は「近くにいる人」と話す
新しい学校に入った初日。
教室に知り合いが1人もいなかったら、誰に話しかけるでしょうか。
中学や高校に入学して、教室に誰も知り合いがいなかったとき。
私が最初に話しかけたのは、自分の隣の席にいる人でした。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
考えてみれば、不思議です。
その人と趣味が合うかも、性格が合うかもわからない。
ただ「隣にいる」というだけで、話しかける。
人間関係は、心理的な距離だけで決まるわけではありません。
物理的に近くにいること自体が、コミュニケーションを生み出しているのです。
ほんの少し遠いだけで、会話は減る
これは会社でも同じです。
「ちょっとこれなんですけど……」と質問しやすい。
同じフロアにいる人も話しかけやすい。
でも、別のフロアにいる人には距離を感じます。
同じ会社なのに、話しかけるには、ほんのちょっと負担がかかります。
すると、「これは話さなくてもいい」と思うことが増え、会話自体が減っていきます。
「話をしに行く」よりも「自分ひとりで処理する」が勝ってしまうのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
ポイントは、「ほんのちょっと」の負担です。
隣の席なら、
「これ、どう思います?」
と5秒で聞ける。
でも別のフロアなら、席を立って、エレベーターに乗って、相手が忙しくないか確認して……となる。
すると、
「まあ、わざわざ聞くほどでもないか」
となります。
つまり、人が話さなくなる原因は「消極的な性格」とは限りません。
話しかけるコストが高いから、話さないだけかもしれないのです。
リモートになると「雑談」が消える
オンライン打ち合わせがあっても、雑談は極端に減ります。
隣の人に話しかけるのと雰囲気が違いますし、打ち合わせが終わった瞬間に、バツっと切れてしまうからです。
ほんの少しの手間が、質問の数を減らしているような気もします。
心理的な距離と同じように、物理的に距離が離れていると、コレやアレを共有するための時間がかかってしまいます。
そうすると、考えを話すまでに時間がかかってしまうのです。
これが「遠いものほど伝えるのが難しい」の法則なのです。
――『言語化だけじゃ伝わんない』より
オンラインでは、ちょっとした質問でもチャットを開いて文章を書く必要があります。
オンライン会議も、終われば「退出」で終了。
オフィスなら自然に発生していた、「そういえばさ」が消えてしまいます。
そして雑談が減れば、以前の記事で触れた「コレ」「ソレ」「アレ」という共通理解も増えにくくなる。
物理的な距離が、やがて心理的な距離にもつながっていくのです。
頭のいい人は「人」ではなく「環境」を変える
だから、会話が少ない職場で、「もっと積極的に話しましょう」と言うだけでは不十分です。
本人の性格や意識に原因を求める前に、話しかけるまでの距離を短くできないかを考える。
席を近づける。顔を合わせる機会をつくる。雑談できる時間を設ける。すぐ質問できる仕組みにする。
人間に「もっと頑張って話せ」と要求するのではなく、自然と話してしまう環境をつくるのです。
頭のいい人は、コミュニケーションを精神論で解決しません。
「話すコスト」を下げます。
人を変えるより、距離を変える。
そのほうが、コミュニケーションはずっと自然に増えていくのです。
1981年静岡県生まれ。制作会社にて、雑誌タイアップ広告の制作進行を務めたのち、フリーランスのライターを経験。国際情勢関連の英日翻訳をやりながら、2011年からイラストレーターの活動をスタート。現在は書籍・雑誌・広告など幅広く活動中。特に、ビジネス書や新書での挿絵や図解を担当することが多く、10年以上、活躍している。
これまで、装画・イラストを担当した書籍は200冊以上。『言語化だけじゃ伝わんない ―― 絵を描くように「考える・伝える」技術』(ダイヤモンド社)が初の単著となる。




