株価チャートには、投資家たちの「買い」と「売り」の勢いが表れます。2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さんは、その動きをどう読み取っているのでしょうか。『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の著者でもある窪田さんが、実戦で磨いたチャート術を「孫子の兵法」になぞらえて解説します。
Photo: Adobe Stock
チャートのワザを学んで、トレーディングに勝つ
新連載「孫子の兵法に学ぶ株式投資術」第4回をお届けします。この連載では、毎回チャートクイズを1つ出します。それを解くのに役立つのが、「孫子の兵法」の知恵です。戦争と株式投資、まったく異なるように見えて、実は共通の要素がたくさんあります。そこをしっかり学べばチャートの読みがさらに上達します。私の連載を通じて、実戦に生きるチャート術をしっかり学んでください。
チャートのクイズに挑戦!
以下、A社とB社の3か月の株価チャートをご覧ください。A社・B社ともに100株保有しているとして、今、どうすべきでしょう?
それぞれ「買い増し」・「売り」・「様子見」のどれかを選んでください。
出所:筆者作成
孫子の視点でチャートを眺める
株価チャートは買い手と売り手が戦う場と思ってください。あなたは、一軍を率いて山の上にいて、中立の立場で戦況を見つめています。勝ちそうだと思う方に加勢してください。
そこで参考にしていただきたいのが、以下の教えです。
出所:「孫子の兵法」虚実編より作成
「千里を進軍しても疲弊しないのは、敵のいないところを進むからである」
「(砦を)攻めて必ず取るのは、守備が薄い所を攻めるからである」
A社とB社の株価チャートをご覧ください。
チャートの形はほとんど同じです。違いは最後のところです。A社は1,210円、B社は1,180円まで上昇しています。そのわずかな違いを除けば、チャートはほとんど同じです。
ただし、売買高の推移は、まったく異なります。A社は、長らく売買高が低迷していましたが、足元、急増しています。一方、B社は売買高がかなり多かったのに、少しずつ減っています。
クイズの正解は…
A社は「買い増し」です。B社は「売り」が良いと思いますが、「様子見」でも間違いとは言えません。
ここでもう一度、A社チャートを見てください。
出所:筆者作成
A社株価は1,210円まで戻しています。ここからさらに上昇していけるかを考える上で大切なのは、「戻り売りの圧力」を読むことです。
(1)「チャートの節」を突破できそう
1,200円は「チャートの節」で戻り売りが出やすいが、株価は戻り売りをこなして上昇していくと思われます。
A社株価は1ヵ月くらい1,200円で滞留していました。したがって、1,200円は戻り売りの出やすい「チャートの節」となっています。
ただし、このチャートの節は突破できそうです。株価が1,200円で滞留していた時の出来高(売買高)が少なかったからです。足元の出来高がきわめて大きいので、買いの勢いはかなり強く、1,200円の節は突破できそうです。
(2)戻り売りの出にくい「真空地帯」
1,200円~1,500円は「真空地帯」となっています。あまり大きな戻り売りは出ないと思われるので、上昇しやすい価格帯と思われます。
株価が1,500円から1,200円まで下落する間、出来高がとても少なくなっています。つまり、この価格帯で買った投資家は少なかったわけです。したがって、この価格帯は、戻り売りの出にくい「真空地帯」となっています。
足元では出来高を伴って株価が急騰していることから、この価格帯では戻り売りをこなして上昇していく可能性が高いと思います。
トレードは、勢いが強い方に乗るのが鉄則
これを、孫子の兵法の視点で見てみましょう。買いの軍勢は、連戦連敗で後退を続けてきましたが、1,000円まで追いつめられた所で、突然大軍が味方につき、売り軍勢を一気に押し返したところです。1,200円の砦はあっさり落とし、さらにその先は大した抵抗も受けずに、失地を取り戻していくことが期待されます。
買い手は、敵の「守らざる所を攻め」、その先、「無人の地を進む」ことが期待されます。ここは、買い手に加勢すべきです。
一方のB社は、足元の出来高が小さく、1,200円の節を抜けられそうにありません。その先も、かなり戻り売りが出てくることが予想され、進軍は難しそうです。
戻りはここまでと見て、売るのが良いと思います。ただし、しばらく様子見するのも悪くはありません。
窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト
慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネジャー歴25年。公的年金・投資信託・ニューヨーク上場ファンドなど、2000億円超の日本株運用を担当。2014年より現職。楽天証券「トウシル」で月間200万PVを超える人気の投資コラムを連載。「トウシル」のYouTubeで月間20万PVを超える自身出演の動画を配信中。内閣府「女性が輝く先進企業」表彰の係る選考委員・企業会計基準委員会「ディスクロージャー専門委員会」委員・日本証券アナリスト協会「企業会計研究会」委員などを歴任。『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーが明かす「超」成長株の見つけ方』(幻冬舎)など著書多数。



