株価チャートには、投資家たちの「買い」と「売り」の勢いが表れます。2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さんは、その動きをどう読み取っているのでしょうか。『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の著者でもある窪田さんが、実戦で磨いたチャート術を「孫子の兵法」になぞらえて解説します。

下落した株はどこで買う? 株のプロが見ている「反発のサイン」Photo: Adobe Stock

テクニカル分析の「ワザ」を紹介します

 今日より、新連載「孫子の兵法に学ぶ株式投資術」を担当する、窪田真之です。よろしくお願いします。

 私には過去25年間の日本株ファンドマネジャー経験があります。20代で1000億円超、40代で2000億円超の資産を運用して、ベンチマーク(配当込みTOPIX)を大きく上回る実績をあげてきました。

 戦いに勝つための武器は二つです。ファンダメンタルズ分析(企業業績・財務内容の分析)とテクニカル分析(チャートから得られる情報の活用)です。どちらも重要です。

 平常時(あっと驚くようなハプニングが無い時)にはファンダメンタルズ分析が生きます。でも、それだけではダメです。非常時(誰も予想しないような重大な変化が起こる時)には、ファンダメンタルズ分析だけに頼っているとボロ負けすることがあります。そういう時に、テクニカル分析が生きます。

 私が、25年もの間、ベンチマークに勝ってこられたのは、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の両刀を使いこなしてきたから、と思っています。

 この連載では皆さまに、私がファンドマネジャー時代に実際に使っていたテクニカル分析の技をお届けします。何万回というトレードをしながら編み出した、私独自のチャートの読みです。

株価チャートは「買い手」と「売り手」の戦場

 ローソク足や移動平均線の見方は、多くのチャート本に書かれていることと同じです。大きな違いは、その動きの裏にある「投資家同士の戦い・心理」をしっかり分析して、実戦に活かすことです。

 そこで生きるのが「孫子の兵法」の知恵です。戦争と株式投資、まったく異なるように見えて、実は共通の要素がたくさんあります。そこをしっかり学べばチャートの活用がさらに上達すると思います。チャート大好き人間の方も、チャートってよくわからないと思っている方も、ぜひ私の連載を通じて、実戦に生きるチャート術をしっかり学んでください。

 毎回1つクイズを出します。まずクイズを解いていただき、次に正解をお伝えして解説します。チャートなんて見方がまったくわからないという方も、ぜひ「野生のカン」を生かしてクイズにチャレンジしてください。

【クイズ】A社~D社、どの株を買う?

 以下、A社からD社までの株価チャート(過去4ケ月の株価推移)をご覧ください。

 このうち、今、買ってみておもしろいのはどれでしょう? 3つ選んでください。

今、買ってみておもしろいのはどれでしょう? 3つ選んでください。出所:筆者作成

 A社~D社はすべて過去4ケ月のチャートです。どれも、下落トレンドが続いてきたが、足元反発している所です。このまま、さらに株価反発が続くか、あるいはここで息切れして下がってしまうか、考えてください。

孫子の視点でチャートを眺める

 株価チャートは買い手と売り手が戦う場と思ってください。売買高は、戦っている兵士の数と考えてください。あなたは、一軍を率いて山の上にいて、中立の立場で戦況を見つめています。勝ちそうと思う方に加勢してください。

 勝敗がわからない微妙なところで加勢すれば、勝ったときに大きな恩賞(利益)が得られます。大勢が決してから出て行ってもあまり恩賞は得られません。とはいえ、率いる手勢は多くありません。負け方につくと配下の兵を多数失う(損失を出す)ことになります。趨勢が読めない時に、むやみに出ていくべきではありません。

 さて、ここでどう判断しますか?

正解は…

 A社・B社・C社はすべて、チャートの投資判断は「買い」です。

「売買高の変化」に着目して、チャートを分析する

 売買高の変化を見てください。急激に売買高が増えています。何らかの好材料が出て、それを知った投資家が積極的に買い始めていると思われます。ここで買ってみて面白いところです。

 株価チャートを戦場だと思って見てください。当初、売り方の軍勢が、買い方の軍勢をさんざんに打ち破って進撃していました。ただし、奥地に来るにつれて、戦っている兵の数は少なくなりつつありました。A社・B社・C社のチャートを見ると、突然、買い方に大量の援軍が現れて売り方を撃破したところなのが、わかります。

 ここは、すかさず買い方について参戦すべきです。ここから上は、下がる時に売買高が少なかった所なので、戻り売りをこなして上昇していく可能性が高いと思われます。

 一方、D社は、株価は反発しているものの、売買高が増えていません。特に、好材料は出ていないと思われます。株価がかなり下がったので、少し買ってみようと「試し買い」した投資家がいて株価が反発しただけと思われます。

 A社とD社のチャートを再掲します。この2つは実は、株価の動きはまったく同じで、売買高の変化が異なるだけです。

A社とD社のチャートを再掲(出所:筆者作成)出所:筆者作成

 D社は、ここから上は、下がる時に売買高が多かった所なので、戻り売り圧力がここから強くなると思われます。とりたてて好材料がなく、売買高が少ないままでは、これ以上の株価上昇は難しく、そろそろ戻りいっぱいで、株価が反落する懸念もあります。

窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト。慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネジャー歴25年。公的年金・投資信託・ニューヨーク上場ファンドなど、2000億円超の日本株運用を担当。2014年より現職。楽天証券「トウシル」で月間200万PVを超える人気の投資コラムを連載。「トウシル」のYouTubeで月間20万PVを超える自身出演の動画を配信中。内閣府「女性が輝く先進企業」表彰の係る選考委員・企業会計基準委員会「ディスクロージャー専門委員会」委員・日本証券アナリスト協会「企業会計研究会」委員などを歴任。『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーが明かす「超」成長株の見つけ方』(幻冬舎)など著書多数。