個人投資家の間で大きな支持を集めるのが『株トレ』シリーズです。シリーズ第2弾の『株トレ ファンダメンタルズ編』では、60題のクイズを通じて「業績や財務の読み方」を学べます。著者は、ファンドマネジャー歴25年、2000億円超を運用してTOPIXを大幅に上回る好実績をあげたスペシャリストの窪田真之さん。この記事では、編集担当の視点から、本書のポイントを紹介します。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

株で資産を増やす人は見逃さない「決算で必ず確認する3つの数字」Photo: Adobe Stock

決算発表で重要なのは「業績」だけではない

 企業の決算を見るとき、売上高や利益ばかりに注目していないでしょうか。

 窪田さんは『株トレ ファンダメンタルズ編』の中で、業績だけでなく、キャッシュフロー(以下、CF)も必ずチェックしてほしいと強調しています。

 CFを見ると、売上や利益の数字だけでは見えにくい、企業の経営戦略や置かれている状況を読み取ることができるのです。

キャッシュフローの基本をおさらい

 まず確認したいのが、「営業CF」「投資CF」「フリーCF」の3つです。

 営業CFとは、本業による現金の増減を示すものです。営業CFのプラスが大きいほど、本業でしっかりと現金を獲得できていることを意味します。反対にマイナスなら、本業で得た現金収入よりも、支払った現金支出のほうが多い状態です。

 投資CFとは、設備投資や資産の売却など、投資活動による現金の増減を示すものです。設備投資をして現金を使えばマイナスになり、土地や建物、有価証券などの資産を売却して現金を得ればプラスになります。

 フリーCFは、「営業CF+投資CF」です。本業で稼いだ現金から、設備投資などに使った現金を差し引いたもので、事業活動を通じて最終的にどれだけ現金が残ったかを示します。

 この3つのCFを見ると、企業がどのような経営戦略をとっているのかが見えてきます。

 具体例として、同書に掲載されているモデルで考えてみましょう。

 以下は、A社とB社の過去3年度のCFです。それぞれのCFから読み取れる経営戦略と企業の状況は、次の①と②のどちらでしょうか。

A社のキャッシュフローA社のキャッシュフロー
B社のキャッシュフローB社のキャッシュフロー

〈経営戦略①〉
業績不振を受けて設備投資を凍結し、資産を売却して事業を縮小することで、収益の改善を図っている。

〈経営戦略②〉
急成長を見込んで積極的に投資しているが、今のところ成果が出ていない。見込みが外れ、業績が落ち込むことがないか注意が必要である。

A社は…

 A社に当てはまるのは①です。

 A社の2023年度の営業CFは、マイナス20億円でした。本業で現金を稼げていないため、この状態が続けば、事業を維持することが難しくなります。構造改革によって、現金を稼ぐ力を回復させる必要があります。

 投資CFを見ると、2023年度から3年連続でプラスになっています。これは、設備投資をほとんど行わず、土地や建物、投資有価証券などを売却して、現金を捻出していることを示しています。事業を縮小し、構造改革を進めていることが読み取れます。

 ただし、資産の売却を続け、設備投資を抑えているだけでは、将来の成長力が失われ、縮小均衡に陥るおそれがあります。

 明るい兆しは、2023年度にマイナスだった営業CFが、その後プラスに転じていることです。固定費の削減などの効果が表れ、事業を立て直す道筋が見え始めているようです。

B社は…

 B社に当てはまるのは②です。

 B社は3年にわたり、営業CFを大幅に上回る規模の投資を続けています。しかし、営業CFはまったく増えていません。そのため、フリーCFもマイナスが続いています。

 積極的な投資をしていること自体が、直ちに問題というわけではありません。先行投資に時間がかかり、現在も投資段階にあるならば、今後、その成果が表れる可能性があります。

 ただし、投資の成果がいつ出るのか、中期経営計画に誤算はないかを確認する必要があります。成長を見込んだ強気の投資が、結果的に裏目に出る可能性もあるからです。