株価チャートには、投資家たちの「買い」と「売り」の勢いが表れます。2000億円超を運用した元ファンドマネジャーで、楽天証券の窪田真之さんは、その動きをどう読み取っているのでしょうか。『株トレ――世界一楽しい「一問一答」株の教科書』の著者でもある窪田さんが、実戦で磨いたチャート術を「孫子の兵法」になぞらえて解説します。
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チャートのワザを学んで、トレーディングに勝つ
「孫子の兵法に学ぶ株式投資術」第2回をお届けします。
この連載では、毎回チャートクイズを1つ出します。それを解くのに役立つのが、「孫子の兵法」の知恵です。戦争と株式投資、まったく異なるように見えて、実は共通の要素がたくさんあります。そこをしっかり学べばチャートの読みがさらに上達します。
私の連載を通じて、実戦に生きるチャート術をしっかり学んでください。
チャートのクイズに挑戦!
以下、A社の株価チャートをご覧ください。6か月前に買ったA社株を100株保有しています。ここでA社株をどうすべきでしょう?
「買い増し」、「売り」、「様子見」のどれかを選んでください。
なお、A社は高成長を期待されている半導体関連株です。半導体ブームが続いていて、足元の業績は良いと思われています。
出所:実在する過去の株価チャートより筆者作成
孫子の視点でチャートを眺める
株価チャートは買い手と売り手が戦う場と思ってください。
あなたは、一軍を率いて山の上にいて、中立の立場で戦況を見つめています。勝ちそうだと思う方に加勢してください。
そこで参考にしていただきたいのが、以下の教えです。
出所:「孫子の兵法」謀攻編より作成
「10倍の戦力があれば敵を囲め、5倍あれば攻めよ、2倍の戦力があれば兵力を分けよ(別動隊に横手あるいは後方から攻めさせよ)」と教えています。ただし、「敵と兵力が拮抗していれば、うまく戦え」「敵よりも兵力が少なければ逃げよ、勝算がないのに戦うな」とも教えています。
「それって、わざわざ教えてもらうこと?」と思いませんでしたか? 敵よりも味方が多かったら戦って、少なかったら逃げるって、あまりにも当たり前ですね。小学生でもわかるし、猫でもわかる(相手がネズミなら向かっていくし、犬なら逃げる)ことです。
でも、その当たり前のことが現実の戦いでできないことがあまりに多いから、この教えは重要なのです。株のトレーディングでも同じ、その当たり前のことができないことがあります。
クイズの正解は…
ここは「売り」。
株価が買値を下回っているので「損切り」となりますが、売らなければなりません。
出所:筆者作成
なぜここは「売り」なのか?
テクニカル分析で見て、売るべき理由がたくさんあります。
【1】二番天井をつけて下落
【2】大陰線が出た
【3】デッドクロスが出ている
【4】13週・26週移動平均線とも下向きに転換
このチャートを売り手と買い手の戦場と見てください。株価は、買い手の先発隊、13週移動平均線は後発部隊、26週移動平均線は補給部隊(武器や食糧を運ぶ部隊)と考えてください。
最初、買い手の軍勢は連戦連勝で、売り手の国へ進撃を続けていました。ところが、奥地まで来た時、突然、売り手の大反撃を受けて買い手は押し戻されました(大陰線)。
体制を立て直して、もう一度攻め込んだけれど、またも痛烈な反撃を受けて後退させられました(二番天井)。
敵の勢力が強すぎて、先発隊はついに後発隊と補給部隊を置き去りにして逃げ始めました。後発部隊も、補給部隊を捨てて逃げ始めました(デッドクロス)。
どうですか。ここは一目散に逃げるしかないでしょう。
ところが、こんなところで売らずに買い増しする人もいます。
【1】「半導体関連株だからいつか上がるに違いない」
【2】「損切りしたくない」
いろいろな理由を見つけて、売るのをやめてしまう人がいます。売りの大軍に押されて買い方が打ちのめされて逃げ始めている現実を見ていません。
その後A社株は、以下の通り、急落しています。
出所:筆者作成
織田信長は1570年、敵対する朝倉氏を滅ぼす寸前まで追いつめた時、浅井長政の裏切りを知ります。朝倉・浅井に挟み撃ちされる絶体絶命のピンチとなりました。ところが、信長は瞬時に決断して全力で逃げ出しました。「金ヶ崎の退き口(のきぐち)」として知られる撤退戦です。このピンチで致命的なダメージを負わずに逃げたおかげで、後年、朝倉・浅井を滅ぼすことができたといえます。
窪田真之(くぼた・まさゆき)
楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト
慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネジャー歴25年。公的年金・投資信託・ニューヨーク上場ファンドなど、2000億円超の日本株運用を担当。2014年より現職。楽天証券「トウシル」で月間200万PVを超える人気の投資コラムを連載。「トウシル」のYouTubeで月間20万PVを超える自身出演の動画を配信中。内閣府「女性が輝く先進企業」表彰の係る選考委員・企業会計基準委員会「ディスクロージャー専門委員会」委員・日本証券アナリスト協会「企業会計研究会」委員などを歴任。『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーの株トレ 世界一楽しい「一問一答」株の教科書』(ダイヤモンド社)『2000億円超を運用した伝説のファンドマネジャーが明かす「超」成長株の見つけ方』(幻冬舎)など著書多数。



