完璧を求めすぎて仕事を終えられない。やらなければいけないことを先延ばししてしまう。そんなときの対処法を、『おい、とりあえず終わらせろ』の著者、nwiizo(ぬうぃぞう)氏が伝えます。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)
任された仕事を張り切って、「完璧にこなそう」と思うのは良いことだと思われがちです。
もちろんその心がけはいいのですが、わからなくて立ち止まったままになると、仕事が滞ってしまうことも事実。
そこで私が提案しているのは、100点ではなく「60点を積み重ねる」という方法です。
ただ、「60点で出す」と口で言うのは簡単ですが、「何が60点か」はやってみないとわかりません。
新人の頃の私は、60点を「自分が恥ずかしくないライン」だと思っていました。
ところが、名前のスペルから図表の見出しの位置まで気になりだし、結局80点を目指してしまう。何も変わりませんでした。
そこで「とにかく出す」と振り切ったら、レビューアーに「何を見ればいいのかわからない」と返され、全面やり直しになりました。どちらも失敗でした。
どの欠陥を許容するかを選ぶ
では、60点の正体とは何か。
それは、「どの欠陥を許容するか」を能動的に選ぶ行為です。欠陥をゼロにしようとするのではなく、どの欠陥なら今回は許容できるかを選ぶのです。
システム設計の世界に、CAP定理という有名な法則があります。「一貫性」「可用性」「分断耐性」という3つの性質を、同時には満たせないというものです。
必ずどれかひとつを諦めるしかありません。技術力の問題ではなく、どれだけ優秀なエンジニアが束になっても、3つ全部は取れないのです。
だから設計者の仕事は、3つを追いきることではありません。何を諦めるかを自分で選び、それを宣言することです。
60点で出すというのも同じです。欠陥を見て見ぬふりをすることではなく、「今回はこれを諦める」と決め、その判断を記録に残すのです。
手を抜いたのではなく、「捨てるものを選んだ」
例えば、ある画面で、2人が同時に更新したときの挙動が怪しい場面があったとします。
ここで一貫性(どこから見ても同じデータが返ること)をどこまでも優先しようとすれば、直すのに3日かかり、出すことが遅れます。でも、この状況が起こる確率は、月に1回あるかないかです。
CAP定理の考え方を借りれば、こう選べます。
「今回は一貫性を一部諦めて、まず動くものを届ける側を取る。同時更新は既知の問題として残し、発生したら手で直す。来月の作り直しで引き直す」。
これは手を抜いたのではなく、捨てるものを選んだ設計判断です。
完璧主義とは、「全部取り」を狙い続けること
その点、完璧主義は、原理的に無理だとされている「全部取り」を、それでも狙い続ける態度です。
3つ全部を守ろうとして、結局どれも選べず、いつまでも出せません。「ここは磨く、ここは今回捨てる」と仕分けるには、何が本質で何が枝葉かを見極める判断が要ります。
言い換えれば、「スコープを絞る」ということ。この仕分けを事前に言語化するのです。
責任範囲が広がり、時間も有限になるほど、全部は拾えなくなります。
ぜひ今日の仕事で「今回は諦めること」をひとつ書き出し、理由をひとこと添えてみてください。
一気に仕事が回り出すはずです。
本書の内容
まえがき 完璧を目指して、今日も終わらなかった
「もう少し良くしてから」の罠
「60点で出す」という革命
私たちには「終わらせる技術」が必要だ
第1章 おい、部屋を掃除しろ ―― 「完了」の正体を知る
「擬似完了感」のループに陥ってはいけない
「部屋の掃除」は終わらせるための小さな練習 ―― 小さな完了は複利のように効く
「わかってから出す」は動かない言い訳
あなたの「まだ60点」は、相手の「もう十分」かもしれない
「真面目な完璧主義」は「怠惰な先延ばし癖」と同じ
「良い」の基準を自分の中だけにとどめるな
先延ばしは「明日の自分への丸投げ」で進行する
「今日こそ頑張ろう」を繰り返さないための5ステップ
第2章 おい、やることを絞れ ―― ステップ1「決めろ」
何も聞かないまま2週間過ごすな
スコープを絞れ
「良い感じ」は測れないから終了条件を言語化する
ゴールは近い未来に置く
60点とは妥協ではなく「何を捨てるかを選ぶ」こと ―― 優秀なエンジニアも「諦めること」を決めて動く
早く聞く人が一番偉い ―― 「この方向で合ってますか?」を最初の30分で聞く
「山の間で立ちすくむロバ」になるな ―― 「十分良い」を選ぶ
小さな決定を頭の外に出す
第3章 おい、完了を祝え ―― ステップ2「分けろ」
やるべきなのに手が動かないのは、タスクがでかすぎるから ―― 「根性」より「構造」を疑え
「ただ手を動かせば終わる作業」に悩まないために ―― 「わからなさ」には5つの層がある
「全部わからない」は、書き出す前の幻想
完了を祝え
自分の「動ける粒度」を知る
動いたから見えた問題は前進の証拠
第4章 おい、手を動かせ ―― ステップ3「始めろ」
完璧な準備は、永遠に来ない ―― 方向だけ確認してから走れ
やる気を待つな ―― でも、体調は本当に大事だ
「本来の自分」という幻想を捨てる ―― 言語化も60点でいい
無駄かどうかの「判断そのもの」を消す環境設計
「美しい暮らし」の話にしないこと
「馬鹿げた小ささ」が効く ―― 「毎日30分」が失敗を作る
完璧主義者こそ、AIに叩き台を作らせろ
思わず始めてしまう「トリガー」を設定せよ
「失敗しても致命傷にならない構造」を先に作る
通知を切れ、視野を狭めろ ―― 「どうせ何をやっても変わらない」という冷笑は完璧主義の変形
第5章 おい、60点で出せ ―― ステップ4「出せ」
成果物と人間の価値は別物 ―― 「もし後輩がこれを出してきたら?」と想像する
シンプルなものをシンプルなまま出せ ―― 「早く終わってしまった気まずさ」を超える
早めのフィードバックは自分の死角に気づかせてくれる ―― アウトプットの質を落とす記憶の書き換えに抗う
「評価されたい」と「60点で出す」は両立する
助けが必要な状態を、ひとりで抱え込まない ―― 「60点で出す」のを許されるための関係性の作り方
「後戻りできないポイント」を外さない ―― 完了が先、改善は後
第6章 おい、いいからやり直せ ―― ステップ5「回せ」
「未来に向けたアドバイス」を受け取れ ―― 相手を評価者モードから助言者モードに変える問い
場当たり的な改善は「言葉の裏」を読むことで防げる
フィードバックの価値は受け手の準備で半分決まる ―― 解決法ではなく問題を言語化する
1回のフィードバックから10回使える原則を抜き出せ ―― 「自分は成長している」という感覚に騙されない
優れたチームは「誰が悪かったか」を問わない ―― 感情の処理と構造の理解を分ける
100回夢見るより60点で3回出せ
小さな成功が「地味な確信」を育てる ―― 「高揚感のある自信」より「地味な確信」
失敗など構わない ―― 仮説があれば
あとがき ―― あなたが終わらせたものを、誰かが待っている
私のおすすめの本を紹介します ―― とりあえず終わらせるために効く本たち