「ゲームに負けると、すぐに怒り出す」「負けたことが悔しくて、いつまでも機嫌が直らない」。そんな子どもの姿に、どう対応すればよいのか悩む親も多いのではないだろうか。
じつは、子どもにとって「負ける経験」は、感情をコントロールする力や人間関係を築く力を育む大切な機会にもなるという。では、負けるとヘソを曲げてしまう子に対して、親はどのように関わればよいのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

「負けるとヘソを曲げる子」への、親の対応・ベスト1【小児科医が解説】Photo: Adobe Stock

カードゲーム、ボードゲームが注目されている

 デジタルのゲームや活動がどんどん進化している現代ですが、最近、昔ながらのカードゲーム(トランプやUNO®)、ボードゲーム(すごろくなど)が改めて注目されています。

 カードゲーム、ボードゲームで家族や友だちと遊ぶことで、さまざまな能力が身につくことがわかってきました。

 たとえば、記憶力や協調性、勝ち負けへの対応や判断力など、ホリスティック(全体的、包括的)な脳・体・心の発達につながると注目されています。

 研究ではほかに、算数・数学力や読解力の強化になることも示されています(9)。

ADHDのコントロールにもよい

 2025年の米国の研究では、幼児から高齢者まで人生のさまざまな場面で、ボードゲームが認知行動療法的に効果のあることが示されています。

 ボードゲームによってさまざまな知識が身につくだけでなく、たとえばADHDの症状をコントロールするのにも有効とされています(10)。

学力も上がる

 2024年のスペインの研究は、522人の8歳を中心とした子どもを対象にしたものです。

 小学校の教室で、ふつうの授業のグループとボードゲームを取り入れたグループとで、国語力と計算力を授業の前後で測ったところ、ボードゲームのグループのほうが成績が上がったという結果でした。

 ゲームを通して楽しく主体的に学ぶことができ、その結果、学力が上がったことを示しています(11)。

ボードゲームにはどんな種類と効能があるの?

 ボードゲームにはいろいろありますが、大きく分けて協力型と競争型の2種類があります。

 協力型は力を合わせないと目的を達成できないので、協調性を高めるにはとてもよい方法です。成功したらみんなでハイタッチしたりすると、より楽しい体験になりますよ。

「協力型ボードゲーム おすすめ ランキング」などの検索ワードで調べると、いろいろな協力型ボードゲームが紹介されているので、参考にするとよいでしょう。

 代表的なゲームに「ダイナソーエスケープ」「マーメイドアイランド」などがあります。

気持ちをコントロールする練習にもなる

 一方、昔からあるモノポリーは、サイコロを振ってボード上の不動産を買い集め、最終的に全員を破産させて独占(モノポリー)を目指すゲーム。競争型ゲームの代表格の1つです。

 競争型のゲームでは勝者と敗者が出ます。負けても機嫌を損ねることなく対応できるグッドルーザー(good loser)=負け上手になることを学ぶ、よい機会になります。

 負けるのは絶対に嫌、失敗は許せない、負けるのが嫌だからじゃんけんもしない、ルールを覚えていないことや戦法の甘さを突っ込まれるのが許せない、間違ったことを指摘されると相手が先生でもキレる――
 このような特徴は、実はASD(自閉スペクトラム症)で見られる脳の特性です(とはいえ、必ずASDとは限りません)。

 こうした特性が強いと、学校でも社会でも人間関係をうまく保つのが難しくなります。こういった子に対して当クリニックではマンガやイラストを用いて介入していますが、ゲームもトレーニングとして有用です。

負けるとへそを曲げてしまいます。どうしたらいい?

 ゲームに負けた子どもがキレてしまうこともありますよね。そんなときは一同穏やかに、

「悔しいよね。
でも怒らなくていいんだよ。
人は負けたときに本性が出る。
負けたときこそ穏やかに相手を称えるグッドルーザーになろう」

 と話します。

 負けても「怒らない、逃げない、腐らない、恨まない、あきらめない」というスポーツマンシップを育てたいですね。

 もし、家族で協力できたら、たとえばお父さんが負けて

「つまらない! こんなゲームはもうやらないぞ!」

 と叫ぶシーンをあえてロールプレイ(ごっこ)で見せて、そんなお父さんを見たらどう思うかなと、家族で話してみるのもよいかもしれません。

 また、負けたお兄ちゃんが

「ああ、負けちゃった! 悔しいけど、みんな上手だよね、さすがだね」

 とグッドルーザーの見本を示すのもよいです。

 負ける体験をすることで負けた人の気持ちがわかり、自己成長の貴重な経験となります。

 1人で没頭するゲームもよいですが、たまにはみんなで輪になって楽しむゲームもよいものです。「今日、みんなでトランプでもしない?」と声をかけてみるのはいかがでしょうか。

 一度ボードゲームを面白さを知ると、大人になっても楽しめます。中毒性の高いスマホゲームよりも「ボードゲームのほうが面白い!」という思考のクセ、習慣をつけられるとよいですね。

9 Using Family Games to Encourage Healthy Development. [cited 2026 Jul 31]. Available from: https://www.sbm.org/healthy-living/using-family-games-to-encourage-healthy-development
10 Alweis E, Alweis R. A narrative review of the benefits of board games in health. Cureus. 2025;17(9):e92484. doi: 10.7759/cureus.92484.
11 Vita-Barrull N, Estrada-Plana V, March-Llanes J, et al. Do you play in class? Board games to promote cognitive and educational development in primary school: A cluster randomized controlled trial. Learning and Instruction. 2024;93:101946.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。