「英語を身につけるなら、できるだけ早いほうがいい」。そう考えて、幼いうちから英語教育を始める家庭も少なくないだろう。しかし、早くから英語漬けの環境に置くことが、すべての子どもにとってプラスになるとは限らないという。実際、2歳から英語オンリーのスクールに通い、家庭でも英語の動画を見ていたある子には、親が思いもしなかった変化が表れた。いったい、何が起きたのか。『医師が教える 子どもの習慣50の基本』から一部抜粋してお届けする。(ダイヤモンド社書籍編集局)

2歳から英語オンリーのスクールに通い、家では英語動画を観ていた子の末路【小児科医が解説】Photo: Adobe Stock

英語学習はやっぱり早いうちからがいいの?

 英語に苦労した人ほど、自分の子どもには英語が得意になってほしい思いを抱くものでしょう。それはとてもよくわかります。

 しかし両親が日本人の家庭では母国語である日本語が確立してから、つまり5歳以降くらいから英語を習うほうがよいかもしれません。

 とくに言語発達のリスクがある一部のお子さんの場合、あまり早期に外国語環境に置くと、母国語、第2外国語の両方とも獲得が遅れてしまう現象が知られています。

 当クリニックでも、2~3歳のときから英語オンリーのプリスクール(未就学児が通うおもに英語で保育、教育を行う施設)に通わせて日中は英語漬けで過ごし、家でもセサミストリートの動画をずっと流しているなどの日本人家庭をたくさん見ています。

 その中でも、当クリニックに来院した3歳の男の子は、2歳のときから英語のプリスクールに通っていて、日本語も英語もほとんど発語がありませんでした。

 私からプリスクールをやめろとはいえないので、少なくともおうちでは日本語でしっかり対面でお話をして、日本語の本をたくさん読み聞かせて、日本語の歌を聞いて一緒に歌ってくださいと伝え、実践してもらったところ、その後は日本語、英語ともに発語が出てきました。

早く始めることにこだわらなくてもいい

 近年の研究では、ネイティブ同様にある言語をあやつれるようになるには、大脳生理学的に10歳までに習得を始めるべきだとされています(6)。また、その研究では、言語獲得は17歳ごろまでなら可能であるとも述べています。

 一方、私が外国語大学に入学し、つまり18歳から第2外国語の勉強を始めて、その言語がペラペラになっている同級生を何人も知っています。

 つまり英語を学ぶことはよいことだけれど、あまり「早く始める」ことにこだわらなくてもよいということです。

親がバイリンガルの場合、どうしたらいい?

 では、バイリンガルまたはポリグロット(3か国語以上を話す人)の家庭に生まれた子どもの場合はどうでしょうか。

 たとえば、お父さんがスペイン語と英語、お母さんが日本語と英語を話せて、両親どうしは英語で会話している家庭の場合などです。

 その場合は、
●お母さんは常に日本語で子どもに話す
●お父さんは常にスペイン語または英語のどちらかを話す

 スペイン語か英語かどちらか迷ったときは、子どもに習得させたい言語を決めて、それに徹して話すようにすると、子どもは2つの言語を混乱させることはありません。1~2歳ごろは発語発達が若干ゆっくりに見えるかもしれませんが、やがて2か国語を習得します。

6 Hartshorne JK, Tenenbaum JB, Pinker S. A critical period for second language acquisition: Evidence from 2/3 million English speakers. Cognition. 2018;177:263-277. doi: 10.1016/j.cognition.2018.04.007.
伊藤明子(いとう・みつこ)

赤坂ファミリークリニック院長/小児科医/MD,MPH/BCIA認定ニューロフィードバック認定医
NPO法人Healthy Children, Healthy Lives代表理事。東京外国語大学卒、帝京大学医学部卒、東京大学大学院医学系研究科修了。医師になる前から同時通訳者として天皇陛下や歴代首相、米国大統領の通訳を務め、現在も医学系会議を中心に活動している。通訳の仕事をしながら2児をもうけたあと、40歳で医学部を受験し、医師に。卓越した英語力を武器に、海外の学術論文から日々最新の情報をアップデートしている。メディア出演も多く、わかりやすい説明と親しみやすい人柄で子どもはもちろん、その親からの信頼も厚い。著書に『医師が教える 子どもの食事 50の基本』(ダイヤモンド社)などがある。